裁判権

新たに日本と国交を樹立したX国は、東京に大使館を設けることになり、館内の大ホールを飾る絵画三点、代金合計二、五〇〇万円を画商Yから買い受けました。売買契約成立の際、Yは内金として五〇〇万円を受けとりましたが、まだ現品を納入しないうちに、X国側では、その絵画が偽物であるとの情報を得たので、トラブルを生じました。
X国利としては、Yを相手どって売買契約の要素に錯誤があったとしてその無効を主張し、内金五〇〇万円の返還を求める訴えを東京地裁に提起しました。裁判所は、いかに処理すべきでしょうか。
Yは、X国を相手どって、絵と引換えに残代金二、〇〇〇万円の支払いを求める旨の訴えを東京地裁に提起しました。裁判所としては、どのように処理すべきでしょうか。Yが、この訴えを、X国の内金返還請求訴訟に対する反訴として提起した場合にはどうでしょうか。
Yが、すでにX国の裁判所に、同趣旨の訴えを提起し、その訴訟が係属中、重ねて、日本で同趣旨の訴えを提起できるでしょうか。
X国大使館用地につき、所有権を主張するZが、X国を相手どって建物収去、土地明渡請求の訴えを提起したとすれば、裁判所はどのように処理すべきでしょうか。

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民事裁判権は、広義の司法権の一分肢であり、国家主権の現われであるから、当然に国際法上の制約をうけます。したがって、民事裁判権の限界は、対外的には、国際法の原則に従って判定されます。外国国家が当事者として裁判権の行使から除外されることは、多数の国の承認する国際慣例です。しかし、裁判権の免除が例外的に否定される場合があります。他国裁判権への任意の服従がこれです。これには、条約または外交手続による場合と外国みずから訴えを提起し、また訴訟参加をして、任意に日本の裁判権に服する意思を表示する場合とがあります。これらの場合には、特権放棄の意思は明瞭であるから問題はありません。
これに対し、応訴の場合は問題があります。特権放棄は、訴訟要件であると同時に当該訴訟の効力要件です。応訴の場合、この特権放棄をいかに確定するか。訴状を送達しないかぎり、応訴するか否かを知ることができません。そこで、確定的に放棄をしていない場合を除いて、当該外国に対する送達をなしうるという見解が成立します。これに対し、治外法権を有する者の意思を確認するためには、訴状の送達をしないで、最高裁判所を経て外務省を通じ、その意思を確認する必要があるとする説もあります。職権による送達および期日の呼出しは、国権の行使にほかならないから、治外法権を有する者に対して強制することができないからです。訴えを提起しても、反訴の被告となる意思まで表示したことにはなりません。従来の訴えと関連性はあるにしても、反訴は、別事件であるから、放棄の効力は及ばず、応訴を拒むことができると解されます。
いわゆる二重起訴の禁止を規定する民事訴訟法二三一条にいう「裁判所」は、日本の裁判所を指すものであって、外国裁判所を合むものではありません。
土地所有権関係訴訟については、領土主権と治外法権とのいずれを優先させるかの問題が生じます。前者優先が大陸法系で、後者優先が英米法系です。外国も日本の裁判権に服するとしたものがあります。外国国家の訴訟上の代表者は、既承認の国家で、外交使節の接受があればその者(国際慣例)、来承認国家の場合は総領事です。

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