訴訟と非訟

X男とY女は結婚し、長女Aが生まれたが不和となり、Yは、Aをつれて実家に帰ってしまいました。XがYに対し、離婚の訴えをS地裁に提起したところ、Yは、離婚の反訴を提起するとともに、Aの親権者をYと指定することを求め、A成年までの扶養料として、毎月二〇万円の支払いを請求しました。
こうした場合、離婚訴訟の被告が提起する離婚の反訴は、適法でしょうか。
受訴裁判所としては、離婚判決と同時にXまたはYを親権者と定めるのは当然ですが、さらに扶養料の請求についても裁判できるでしょうか。
仮に、扶養料の請求については判決できないとした場合、受訴裁判所としては、この部分をどのように処理すべきか。また、判決をしてしまったとすれば、その効力はどうなるのでしょうか。
そして、離婚の訴えが家庭裁判所に提起された場合、家庭裁判所は、ただちに、これを地方裁判所に移送することができるでしょうか。
一般の訴訟手続と家事審判のような非訟手続とは、手続構造を異にするといわれますが、いったい、どのような諸点に、両者の違いが顕著にみられるでしょうか。

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本訴の被告が同一の請求につき、別訴を提起するか反訴を提起するかは原則として被告の自由です。しかし、婚姻事件では、訴訟を繰り返させないとする原則があるから、反訴を起こせる請求については、別訴の提起は禁止されます。
家事審判事項は、原則として家庭裁判所の専属管轄事項であって、通常裁判所が訴えに基づく判決手続によってこれを裁判することはできません。最高裁の判例は一貫してこの立場を堅持します。例えば、離婚訴訟において、妻が反訴として離婚請求に附帯して婚姻費用の分担を請求した事件において、その分担額は、通常裁判所が判決手続で判定できないとしています。これに対し、有力説は、婚姻費用の分担は婚姻関係の存在を前提とし、また子の扶養料は婚姻関係の存否にかかわらないから、婚姻訴訟の係属中でもそれとは別個に家庭裁判所に審判申立てをすることはできますが、当事者が離婚請求等と同時解決を望む限り、むしろこれらの附帯請求を適法と解するのを妥当としています。
家事審判事項に属する事件について地方裁判所(または簡易裁判所)に訴えが提起された場合、最高裁は、家庭裁判所へのその移送を甲類審判事項についても、乙類審判事項についても否定しています。学説上、移送肯定説、移送否定説、折衷説の対立がありますが、裁判制度を利用する国民の利益保護の観点から民事訴訟法の移送に関する規定を類推適用するとの肯定説が有力。判決がなされても当然無効ではなく有効と解せられます。上訴があれば、手続違背または管轄違いを理由に原裁判は取り消されます。
人事訴訟事件を含むすべての家庭に関する訴訟事件については、調停前置主義が採用されているから、移送はただちにできません。
非訟手続の原理と民事訴訟のそれとは原理を異にしています。民事訴訟が当事者主義的構造を有し、公開主義によって行なわれる法律的手続であるのに反し、非訟手続は職権主義的構造を有し、非公開で行なわれる裁量的手続です。近時の非訟事件の拡大現象に伴う両者の境界の流動化に注意が必要です。

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