裁判を受ける権利

Xは、数年前から、Y所有の土地を賃借して建物を建築し、そこでレストランを経営してきましたが、経営不振となったので、この建物をAに売却して他に移転することとし、借地法九条の二第一項により賃借権の譲渡につき賃貸人の承諾に代わる許可の裁判をS地裁に申し立てました。Yは、土地の賃貸借契約は昨年すでにXの地代不払いのため解除されたと主張して争いましたが、裁判所は、審理の結果、解除は無効でXはなお賃借権を有すると判断し、XがYに金三〇万円を支払うことを条件として、XからAへの賃借権譲渡を許可する旨の決定をしました。Yは、S高裁に即時抗告したがが棄却され、さらに、最高裁に特別抗告を申し立てました。
Yは、特別抗告の理由として、S地裁における賃借権譲渡許可の裁判にあたって手続が公開されず、口頭弁論もなく、判決の形式にもよっていないのは、憲法三二条および八二条に違反すると主張しました。その当否はどうでしょうか。
賃借権譲渡許可手続中にYがXを相手どって賃借権不存在確認の訴えを提起しました。裁判所はどのように処理すべきでしょうか。

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かつて、最高裁は、憲法三二条は、国民に裁判所で裁判を受ける権利を保障しているだけで、その裁判手続の内容までを云々しているものではなく、立法で対審ないし判決の手続によるものとした裁判について公開を保障したものにすぎないと判示し ました。この判決に対しては厳しい批判が加えられましたが、幸いにもその後、最高裁は、「憲法は一方において、基本的人権として裁判請求権を認め、何人も裁判所に対し裁判を請求して司法権による権利、利益の救済を求めることができることとすると共に、他方において、純然たる訴訟事件の裁判については、前記のごとき公 開の原則の下における対審及び判決によるべき旨を定めた」と判示しました。ところで、賃借権譲渡許可の裁判は、訴訟におけるように当事者の権利義務の確定を目的とするものではなく、本来借地関係の当事者が合意によって定めることを、裁判所が代わって裁判で定めることを目的とします。このように、この裁判は、裁判所が私人間の自主的協議が調わないための行詰りを打開するために、後見的に介入する点から、非訟事件の裁判として性格規定されます。したがって、この裁判には、訴訟におけるような訴訟形式は要求されません。
私法的訴権前にしても、公法的訴権前にしても、私人と訴訟との架橋あるいは実作法と訴訟法との関係をいかに論理的に構築するかの観点から議論されてきました。しかし、最近においては、裁判を受ける権利は、何人も自己の権利または利益が不法に侵害されたと認めるときは、裁判所に対してその主張の当否を判断し、その損害の救済に必要な措置をとることを求める権利(裁判請求権または訴権)を有することを意味するとの主張が有力になされています。
借地非訟事件の裁判には既判力はありません。したがって、認容の裁判がなされ、確定しても、借地権の存否を争う別の訴訟の判決で借地権不存在の判断をうけることもありえます。権利の確定は訴訟によることが予定されているからです。この結果を避けるために、訴訟係属の場合には、借地非訟手続を中止することができます。

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