工場の担保化

一つの工場は、これを構成する土地、建物等の不動産、機械、器具等の動産、特許権、実用新案権等の無体財産権などが有機的に結合し、さらに人間が加わって、合目的的に管理運営されたとき、はじめて十分な機能を発揮します。担保価値の面からみる場合も、工場を全体的、統一的な財産として把える方が、個々の構成部分の算術的総和として計算するより、大きな価値を示すはずです。また、工場を構成する財産のうち、動産は民法上の抵当権の目的物となりえず、質権を設定するほかありませんが、質権を設定すると、目的物の占有を債権者に移さねばならないために、事業金融においては利用できません。占有を移さずに生産手段を担保化するという要求に応える窮余の一策として、譲渡担保の制度がありますが、正規の公示手段がありません。

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もともと抵当権の目的物が民法八六条一項に定める不動産であるということは、抵当権の本質として必然的に要求される事柄ではありません。担保価値の把握が占有と分離するので、登記、登録等、公的な帳簿上の記載によって権利の存在が第三者に公示される必要があることから、民法一七七条との関係上、不動産に限定しただけです。したがって、公示の可能なものであれば、不動産でなくてもよいはすです。船舶、自動車、航空機のように、特定しやすく、かつ一個ずつが比較的高値な動産について、公示手段を整えて抵当権の目的とする動産抵当の制度は、この要求を満たす一つの方向です。もう一つの方向が、工場抵当および各種財団抵当です。これは、個々の動産でなく、動産の集合を不動産と包括して抵当権の目的物の中に取り込もうとするものです。
工場抵当は、工場の所有者が工場に属する土地の上に抵当権を設定すると、原則として、その抵当権の効力が、当設土地に付加して一体となった物、つまり付加物だけでなく、土地に備えつけた機械器具その他工場の用に供する物にも及ぶとする制度です。ただし、土地と建物とは別個の不動産だという一般原則に従って、建物は除かれます。その代わり、建物の上に抵当権を設定したときに、効力の範囲の広張が準用されます。付加物に抵当権の効力が及ぶのは、民法上の不動産抵当も同じですが、工場抵当においては、その範囲が工場の備付供用物にまで拡張されたのです。この点で、工場施設を一体として担保化する方向に一歩進みました。しかし、工場用地が二筆以上に分かれているときは、それぞれに抵当権を設定して共同抵当とするほかありません。また、土地とその上の建家も一本化することができず、やはり別々に抵当権を設定することとなります。
工場財団抵当は、土地、建物を核として、工場に属する機械器具、工場所有権等、有形、無形の財産をもって財団を組成し、その全体を一個の不動産とみなしたうえで、抵当権を設定する制度です。組成物件の中に何筆の土地、何棟の建物があってもかまわず、また地理的に離れていても、全部をひっくるめて一個の不動産として扱うのです。一個の不動産とみなすために、これに設定する抵当権も一個です。もちろん、一個の不動産の上に被担保債権を異にした数値の抵当権を設定するのと同じ意味で、工場財団にも数個の抵当権を設定することはできますが、この場合も、つねに全体について統一的な順位がつくために、共同抵当における順位の錯綜は、生じる余地がありません。
ある工場を担保化する場合、それぞれの適格性さえ具備しておけば、工場抵当にするか、工場財団抵当にするかは、当事者の自由に決しうることです。
一筆の土地とその上の一棟の建物だけが不動産のすぺてというような工場ならば、その両方に抵当権を設定すれば、機械器具を含めて主だった工場資産はほとんど全部抵当権の及ぶ範囲に包含されます。そして工場抵当は、不動産に直援に抵当権の設定登記をすればよいので、手続きも簡単です。ところが資産内容が多種、複雑な大規模工場になると、不動産の個数も多くなり、工場抵当でカバーしれない財産、例えば備付供用物といえない船舶や自動車、工業所有権なども一括して担保化する要請が強まります。そういう場合は、最初の財団組成や目録の作成、公示の手続に相当の負担がかかっても、工場財団にしておいた方が、担保価値が上がり、のちの法律関係が明解になります。
概していうならば、中小規模の工場には工場抵当が適し、大規模工場には財団抵当が適しています。この選択は、最初に担保をつけるときに行なわねばならず、同一工場につき、ある債権者のためには工場抵当、他の債権者ためには工場財団抵当、という使い分けはできません。

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