根抵当権の第三取得者の地位

債権者甲が債務者乙の所有土地上に、一番根抵当権を設定した後、第三者丙が乙から当該土地の所有権を取得し、さらにその後に根抵当権が確定したとします。当該確定根抵当権の被但保債権の現在額が極度額を超えているとすると、民法三九八条ノ二二第一項は、根抵当の確定後、現存する債務額が極度額を超えている場合に、目的不動産の第三取得者丙は極度額に相当する金額を、払渡または供託して、根抵当権の消滅を請求することができると規定します。この消滅請求権の行使によって、当該確定根抵当権は絶対的に消滅します。したがって、この請求権の法律的性質は私法上の形成権となります。

スポンサーリンク

お金を借りる!

新法三九八条ノ二二が立法される以前では、一般的にみて丙の地位は著しく不安定でした。つまり丙の地位は乙の弁済意思と資力に左右され、もし乙が弁済を怠り根抵当権が実行されると丙自らが競落人とならぬ限り、土地の所有権は競落人丁に移転し、丙は丁に対抗し得ず所有権を失うことになります。また、丙の地位は不利であり、目的不動産が競売されると、競売代金のうち、極度額相当額が甲に支払われ、残額は丙ないし後順位権利者に渡るのに対し、丙が競売前に任意弁済をして根抵当権を消滅させようとすると、極度額超過分をも含む現存債務全額を支払わねばなりません。
丙の地位の保護という観点からみると、まず丙が自己の所有権を保全しつつ、確定根抵当権を消滅させる方法があればよいわけです。民法では新法の消滅請求権を含め後述する三種の制度を規定しています。第二に、確定根抵当権を消滅させるには、被担保債務額のうち、丙をして何程の額を甲に支払わせるのが合理的かという問題が生じます。しかし、三種類の制度によって、その額の準拠基準が夫々異なっています。第三に丙にとってどの制度を選ぶのが有利であるかの問題が生じます。
民法では、確定根抵当権を消滅させる方法として、第三者弁済、滌除の二制度を規定し、新法において前述の通り、根抵当権消滅請求権を規定しました。丙は以上の三種の制度を自由に選択することができます。いずれの制度を選ぶのが丙にとって有利であるかの事実上の判断は、具体的場合において、どの制度を選べば丙の出損が最も少なくて済むかということを基準として行なわれます。つまり出損時における現実の現在債務総額、目的不動産の価額、極度額の三者を比較して、夫々の制度において支払わなければならない金額が他に比較し最少の場合に、その制度を選ぶのが有利であるということがいえます。
以上三種の制度は制度利用権者の範囲、行使の要件、手続、および目的物上の他の担保物権との関係、弁済による代位の在否等、法律的構成ないし効果に異同があります。新法では、より合理的な制度として消滅請求権を設けたので、被担保債権の現在額が極度額を超えている場合にはあえて他の制度を利用する必要はありません。しかし理論的には被担保債権の現在額が極度額末満の場合、不動産価額未満の場合もあり得るので、解釈論上他の制度の利用をも考えなければならない余地があります。
根抵当権消滅請求権の制度理念は社会経済的には、長期与信金融取引の円滑化と目的不動産の取引の円滑化、利用価値の高揚との調和調整を企図するものです。法的には目的不動産の交換価値の優先的支配権者たる根抵当権者と、不動産所有権、用益価値の支配確者たる物上保証人、第三取得者、一定範囲の用益権者との、利益調整を企図したものです。その具体的内容は、従来の現存債務を弁斉すべしとする判例の立場を否定して、極度額相当金額の支払で足りるとなし、判例学説の対立を立法的に解決しました。新法の根抵当権は極度額という枠の支配権であり、物上保証人、第三取得者はその範囲で負担を負っているのだから、極度額の支払というのが合理的です。
消滅請求権者は当該目的不動産についての、物上保証人、同第三取得者、地上権者、永小作権者、以上は滌除権者と同じです。さらに対抗要件を具備した賃借人を加えたのが特色です。該当者は、停止条件付でその地位にある場合には条件成就未定の間は、消滅請求をなし得ません。債務者、保証人、その承継人は本条消滅請求をなし得ません。
消滅請求権の要件は根抵当権が確定していること。現存する債務の額が極度額を超えていること。極度額に相当する金額を払渡し、または供託すること。この払渡、供託は、本来の意味の第三者弁済ではなく、消滅請求権行使の前提要件です。
消滅請求権行使の方法として根抵当権者へ消滅請求の意思表示をすること。これによって効力を生じます。共同根抵当の場合には、一つの不動産について消滅請求があればよく、共有根抵当権の場合には、全共有者に対して、意思表示をなすべきです。
消滅請求により、根抵当権は消滅します。絶対的消滅説によれば、転抵当権者、順位の譲渡を受けている者にも、この効果は当然に及びます。被担保債権は、払渡または供託の額だけ消滅します。しかし、第三者弁済ではないために代位は生じません。被担保債権のいずれのものを消滅させるかは、弁済充当の規定を類推すべきです。極度額超過部分の債権は、甲に帰属したまま担保のない債権として有効に残存します。

お金を借りる!

債権がないのに抵当権の実行/ 債権者の競売申立てと抵当権者/ 共同抵当権の実行/ 抵当権設定者の破産/ 不動産の一括売却/ 不動産の一括売却/ 根抵当権の被担保債権/ 根抵当権の被担保債権の範囲/ 根抵当権によって担保される債権/ 根抵当権の変更/ 根抵当権の譲渡/ 相続、合併と根抵当権/ 根抵当権の処分/ 共同根抵当権/ 根抵当の被担保債権の確定/ 根抵当権の第三取得者の地位/ 工場の担保化/ 工場抵当/