根抵当権の譲渡

根抵当権が未確定の場合でも、確定後の場合でも、当該根抵当権によって担保される複数の債権は、夫々個別性を失うことなく、一つ一つ利率や弁済期を異にする独立の特定の債権です。したがって理論的には、根抵当権者甲から第三者乙に譲渡することができることになります。そこで、根抵当権の確定前に、被担保債権の一部または全部が個別的に特定承継されたとすると、譲受人乙は根抵当権を取得して、一部譲渡の場合は従前の根抵当権者、債権者甲と共同して、全部譲渡の場合は乙単独で、根抵当権を行使できるか、つまり、その譲受債権に基づいて競売および優先弁済を受けることができるかとの間題を生じます。根抵当権は債権の移転に当然に随伴して移転し引続き譲渡債権を担保することになるのかとの間題を生じることになります。また、根抵当権の確定後はどのようになるかの間題も生じます。

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通常抵当権には、随伴性が存するのが原則ですが、根抵当権に随伴性を認めるか否かの間題は、もっばら金融界の需要にいずれが適応するか、またいずれが取扱に便利であるかという政策的考慮によって決めらるべきものです。第一に、個別的な債権でも被担保債権だから、根抵当権も当然、債権の移転に伴って移転する、との考えも成り立ちます。他方その債権は根抵当権の被担保債権ではありますが、最終的に担保される債権の候補にすぎず、一時根抵当権の枠の中に入っているだけで、入替り自由性を持っています。そこで、根抵当権は随伴しないとも考え得られます。両者の考えのうち一方を決定的なものとする理論があるわけではありません。第二に当然に随伴するものだとすると、共有状態における根抵当権の、行使の要件や割合、弁済された場合の効果等について、紛糾を生じやすく、ことに根抵当権では、被担保債権が多数あり、夫々別な者に譲渡されることがあり得るために、紛糾の度が大きくなる恐れがあります。したがって理論上の決め手がないとすれば、政策的に、法律関係が簡明となる方、つまり当然には随伴しないとするのが、立法的には妥当であるということになります。
三九八条ノ七第一項前段は、元本の確定前に根抵当権者より債権を攻得したる者は其債権に付き根抵当権を行うことを得すと規定しました。この意味は、甲が根抵当権の枠の中に入っている債権Sを、乙に譲渡すると、その債権Sは当該根抵当権の枠から出て、担保の無い債権となります。したがって、乙は当然には根抵当権を取得することはなく行使することもできない、という意味です。これを根抵当権の側からいうと、根低当権は確定したときに当該根低当権の枠の中に入っていた債権だけを担保します。枠の中に入っていた債権でも、その確定前に譲渡されて債権者を異にするようになると、当然には担保されなくなるという意味です。つまり、本条項によって根抵当権の被担保債権に対する随伴性が、この意味において否定されたわけです。
以上の理は、債権Sとともに、根抵当権が譲渡または一部譲渡された場合であっても変わりません。債権Sは当該根抵当権の被担保債権から除外されて譲渡されるのであり、他方、未確定根抵当権はそれ自体随伴性を有しないので、根抵当権の譲渡は債椎の譲渡とは全く別個、独立に行なわれることになるからです。このように被担保債権と根抵当権は夫々分離、独立したものとして別個に移転されます。
確定前の債権譲渡においても、当事者が特に未確定根抵当権を随伴させたいと希望する場合には、時別の推置を講じて、その目的を達することができます。つまり、債権Sのみが移転せられた場合には、まず譲受人乙に当該根抵当権の一部譲渡を行ない、さらに、このような特定債権Sを被担保債権の範囲に含めるべく、被担保債権の範囲、担保すべき債権の範囲の変更をすればよい。この根抵当権の一部譲渡には、当該根抵当権設定者の合意承諾を要します。債権の譲渡と共に根抵当権が譲渡された場合にも、被担保債権の範囲の変更をしなければなりません。債権者側の営業譲渡によって、債権と根抵当権が共に全部譲渡された場合には、債権の特定承継の集合的現象として三九八条ノ七第一項前段を適用して前述の特別措置を講じない限り、その債権を当該根抵当権で担保させることはできません、と解するか、それとも、合併の規定を準用して、随伴性を語めたと同じ結果を生じさせるかについては、学説が対立しています。
根抵当権が確定した後の被担保債権の譲渡処分については、新法に規定がありません。しかし根抵当権の確定によって、確定時に存在する債権が終局的に被担保債権となり、根抵当権確定前の被担保債権の特色たる不特定性を失って特定性をもつことになります。この点をみれば、普通抵当権に転換するわけではありませんが、それに酷似します。したがって一般原則に従い、随伴性を生じ債権譲渡があれば、根抵当権も共に移転すると解されます。

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