根抵当権の被担保債権

根抵当権は実務上はかなり以前から利用され、判例もこれを有効としてきましたが、民法にはその効力や性格について直接に規定するところがありませんでした。しかし、戦後、取引界における根抵当権の利用度が高まり、その機能が重視されるに及んで、その意義や効力についての議論が活発となり、昭和四六年法律第九九号によって、民法中に根抵当権に関する規定が設けられるに至りました。
根抵当権については、民法ではこれを抵当権の一種としましたが、抵当権との差異は、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度に於て担保するところにあるものとしています。つまり普通抵当権は特定の債権のみを担保するものですが、根抵当権は不特定の債権を担保しうるものです。
そこで特定の債権と不特定の債権との違い間題になりますが、この点は、抵当権とそれによって担保される債権の結びつきが特定しているかどうか、ということにかかっているものと言えます。したがって、例えば、たまたま行なわれた一回きりの金銭消費貸借による貸金貸借のみを担保するという場合は普通抵当権によることになりますが、銀行とその顧客の間に反覆継続して金銭貸借や手形割引が行なわれ、それによって次々と発生し、消滅して行く多数の金銭債権を担保しようという場合は、被担保債権が常に入れかわっていて、担保権との結びつきに特定性がないために、根抵当権によることになります。

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根抵当権により不特定の債権を担保できるといっても、例えば甲が乙に対し今後取得する一切の債権というような、被担保債権たるぺきものの資格を全く限定しない根抵当権を民法は認めていません。つまり根抵当権を設定するにあたっては、その被担保債権たるぺきものの基準を一定の範囲で定めなければならないとしています。しかし、設定に際して定められたその一定の範囲も、設定後においてこれを変更することが可能です。さらに元来、被担保債権というものは、特定の債権者と債務者の組合わせにおいて観念されるものですが、根抵当権においては、設定後にその債務者を変更することもでき、根抵当権の譲渡という方法により、根抵当権者が入れかわることも可能です。つまり当初の設定契約における根抵当権者、債務者、および被担保債権の基準として定められる一定の範囲のいずれもが設定後において変更されうるのであるために、根抵当権とその被担保債権の結びつきは、設定時においても、設定後においても待定されていないわけです。根抵当権とその被担保債権の結びつきについて、普通抵当権におけるような特定の状態が生じるのは、その元本債権が確定した時です。
根抵当権は継続的な取引の担保として多く利用されるものですが、必ずしも取引の開始時に設定されるとは限らず、すでに取引が開始された後に設定されることも多くあります。例えば甲乙間の商品売買取引によって生じる債権を担保するという根抵当権が設定された場合、設定後の両者の取引によって甲が乙に対し取得した売買代金債権がその根抵当権で担保されることは明らかですが、設定前に行なわれてきた面者の取引により甲が取得していた新札発生の売買代金債権がその根抵当権で担保されるか否かが多少問題となります。すなわち、そのような債権は、根抵当権設定の時においてすでに特定していて、不特定の債権とは言い難いのではないか、と思われるからです。しかし、このような債権も、設定時に定めた一定の範囲に属するものであるし、もし設定後にその一定の範囲が変更されることがあれば、被担保債権たるべき資格を失うことになるという点では、やはり不特定の債権にあたるものといえます。つまり、このような設定前の取引による既発生の債権も一定の範囲に属する限り、当該根抵当権によって担保される債権です。

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