相続人の財産承継の自由

相続による財産上の権利義務の承継は、相続人の意思に関係なく、また相続人が知っていたかどうかにかかわらず、当然に生じるのが法律の建前です。しかし相続財産はプラスの財産だけでなくマイナスの財産、つまり債務をも含むものであり、ときには債務の方が多い場合もあります。これを相続の開始と同時に、当然に相続人に帰属するものとすることは、相続人にとって負担となり迷惑を被ることになるので妥当を欠きます。また相続人によっては、たとえプラスの財産であっても、その遺産を貰うことを良しとしない場合もあり、他の相続人に全部帰属させたいとする場合もあります。そこで民法では相続の承認および放棄の制度を設けて、相続人の意思によって、生じた相続の効力を確定させるか否認するかの選択の自由を与えることにしたのです。つまり相続人は相続の効果を強制されるわけでなく、その意思によって、全く相続しなかったことにすることもでき、相続するにしても、被相続人の債務および遺贈によって生じた債務は相続財産の存する限度で弁済し、相続人自身の固有財産をもって責任を負わないという留保つきで承認することもできるのです。そして無条件に相続するという意思のあるとき、および相続の放棄も限定承認もしなかったときに、はじめて全面的に相続を承認したことになります。この場合には相続財産に負債の多い場合でも、相続人の固有財産で弁済する責任を負うことになるのである。

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旧法の家制度の下においては、相続は家の存続のためのものであり、強制的なものでした。したがって家督相続人は家を承継する権利だけでなく義務があると観念され、その放棄の自由は認められず、明治民法は法定家督相続人は限定承認はなしえるが放棄はできないものとしていました。しかし相続を単純な財産相続と観念する近代法の下では、相続するかどうかについては、相続人の意思を尊重すべきものとしています。相続は積極財産だげでなく、債務などの消極財産をも包括的に承継することになるために、人の意思に反して義務を負わせないとする近代私法の大原則が、相続の自由を通じて具現するのです。現行民法では相続自由の立場を明らかにし、相続人は常に、相続を放棄するか、限定承認をするか、単純承認をするかの自由を有するものとしたのです。現行法は3ヶ月の考慮期間中に放棄、限定承認の申込を家庭裁判所にしなければ、単純承認をしたものとみなしていますが、これは相続債権者等の第三者の権利関係を考慮しての措置であり、これは一面、相続人の意思を軽視している結果になっています。しかし、これにより相続についての相続人の選択の自由が奪われているというには当りません。

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