私有財産と相続

私有財産制度を基礎として、個人意思自治を尊重する市民法原理による近代市民社会では、資本主義社会に対応し、活発な生産と取引きを促すことになります。そして資本や企業の発達と相まって、相続がその担い手となって財産蓄積への意欲が働き、資木主義経済社会の発達をもたらし、近代的経済文化が形成されることになります。そこでは、私有財産制が相続の裏づけになると同時に、相続が私有財産制を充実させる役割を果たすことになります。この時期における相続の制度は、意思自治の建前から生前における財産処分の自由と同様に、死後の財産の行方についても自由意思によって決定できるとする遺言相続制が支配的となり、遣言がない場合でも、死者の意思を推測して相続人や相続分を定めるという法定相続が行われ、そこに近代的相続制度の確立をみるに至り、このような近代的相続制度の下においては、長男子全産相続という家産承継的建前は崩れ、諸子均分相続制が原則とされるようになるのは、当然のことといえます。
このような、近代的な私有財産制を基礎として近代市民法理である自由、公平を原則とする相続制度も、20世紀入ってから急速に変革をとげることになります。つまり、私有財産は単なる個人的成果ではなく、むしろ社会的相互依存に基づくものであるという理解から、個人財産処分の自由は絶対的ではなく、社会的に制約されるべきです。親族間の扶養は社会に転化されつつあり、扶養の延長とみられる相続を適当な範囲内で社会に転嫁すべきです。出生や血縁などによって無限に相続を許すことは、無産者の子との間に著しい不公平を生じさせる結果となり、笑う相続人を生じさせる事となり不合理、不都合であるということになります。市民法の社会化と同一次元の問題だといえます。そこで現代諸国の相続法は相続人の範囲をできるだけ生活を共にした近親者に限り、さらに積極的に国や公共団体への財産帰属を考慮しようとする傾向にあります。また相続財産についても制限を加え、高率の相続税を謀するという傾向がみられます。

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