生活騒音と受忍限度

民法では、建物は土地の境界から50cm以上離れて建てることになっていますが、都会の密集地などでは、住宅事情から、これほど離れていなくてもよいとの慣習が成立していると解される場合もあり、建築基準法では、防火地域や準防火地域で耐火構造の建物を建てる場合は境界ぎりぎりでもよい、とされています。このような事情から建物の壁面に取りつけられるクーラーや換気扇の位置によっては、隣家に大きな被害を与える場合も出てきます。しかし建築基準法では、その建物の安全のため換気設備については基準を定めていますが、近隣の立場を考慮した規定は置いていません。
法律に明文の規定はなくても、相隣関係者には互いに相手方の立場も考慮し合い、自己の権利行使も自制し合う、相隣共同関係にもとづく相互配慮、相互抑制の調整義務があり、この義務は、民法上の信義用を具体的にしたもので、相隣関係のような継続的社会関係にとっては、社会生活上、必然的に要求される義務であるとした判決もあります。

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相互配慮、相互抑制といっても、社会生活上の心がけとして相手を気づかい、自己を抑制すれば間題はありませんが、当面の利害が相反する場合は、なかなかそうはうまく事が運びません。このような場合に、問題が裁判所に物込まれた場合、裁判所が加害者の行為の違法性を判断する基準とする重要な要素の一つとして考えられている概念が、受忍限度です。
受忍限度の判断要素としては様々な事情が考えられますが、地域性の間題もその一つで、例えば元々静かな地域か、うるさい地域かによって受忍限度は変わります。
第二種住居専用地域におけるクーラー騒音について、東京都公害防止条例のその地域についての規制基準値を受忍限度を判断する場合の一つの要素として挙げている判例があります。その判例では、公害対策基本法九条に基づく環境基準値をも判断要素の一つとして挙げています。一般家庭騒音について規制基準をもうけていない地方公共団体の場合でも、受忍限度の判断要素の一つとしては、この基準値は考慮されます。しかし、前記判例では、音に対する感覚には個人差があることを指摘したうえ、クーラーが普及して生活必需品化していることや、過密な都会生活の現状を考えると、一定ホン以上の騒音を出したからといって、ただちに違法とするのは通当でないと述ぺています。
この判例が受忍限度を超えていると判断した要素としては次のような事項があります。騒音が公的基準値を超えていること。クーラーの使用期間が、夏の間は間断ないものであること。被害の程度が、相当程度に達していること、つまり、窓、扉を開放した場合に、どの部屋でも、睡眠、読書を妨げられ、窓、扉を閉めた場合、不快感、圧迫感などがあり、睡眠障害、情緒的影響、生活妨害などの精神ストレスを引き起こし、間接的に、頭痛、胃腸の不調などの身体的障害をもたらす可能性があること、双方の人的相隣関係において、たびたびの要請があったのに効果的な防音措置を講じず、逆に加害者が、終始非協力的で不誠実な態度をとり続けたことなどがあります。判例ではこれらを総合して判断しているわけですが、被害者にとって我慢ができないと思われることでも、裁判所は、双方の立場から、社会的に見て、我慢すぺきものかどうか、客観的に判断するもので、訴訟を考える前に、冷静に相手の立場も考慮した検討を試みるべきです。

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