担保価格に変動がある場合

担保価格の変動、特に掛目を割るような担保価格の下落のおそれがある場合にどう対処すればよいかという問題には、2つのことが考えられます。つまり、実際に担保価格の下落という現実の事態が発生してから、その対策を講じる場合と、もう1つは、担保価格の低下をあらかじめ考慮したうえで、評簡額および担保個格を定めておくやり方です。
万一掛目を割るような事態が発生したときには、原則的には担保不足額を補うために、追加担保をとるのが普通です。株式担保の貸付などの場合は、追加担保をとっている例が多く見受けられまが、相手方の資産内容がよくわかっていて、追加担保をとるのにも不安のない場合にはよいのですが、資産全部を担保に提供させた後で追加担保にとる何物もないような場合もないとはいえません。

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担保にとる対象物件が株式であるか、不動産であるか、あるいはその他の物件であるかにかかわりなく、その担保価格というものは、担保すべき期間、例えば設備資金のように3年から5年、あるいはそれ以上の長期間であっても、ともかくその債権を担保すべき期間中、いつでも担保価格として定められた範囲までは確実に保全しうるものでなければ、担保としての意味はなくなってしまいます。もしその保証がなければ、それは単に引当とか、見返り程度の意味しかもちえないことになります。したがって、担保期間中にいつ処分しても、詳価された担保価格までは間違いなく換価され、債権に充当できることが原則です。そこで、担保物件の評価に当たっては、対象物件の価格の変動についても慎重に検討されねばならず、評価額から担保価格を決定するための掛目についても、一般的な基準などといったものにとらわれない個別的な配慮こそ必要なことです。
担保第一主義というか、全面的に担保に依存する考え方によるものを、いわゆる抵当金融的な行き方といいますがが、戦後、特に近年では不動産の担保性が不安定になっているため、この抵当金再融的な考え方では、十分な金融目的が達しえない場合が多くなっています。このため、いわゆる金融抵当的な考え方が強くなり、債権回収の財源は、もっぱら営業収入のような流動資産に依存するというものが多くなってきました。そして、担保はそれを処分して債権の回収を図るという考え方ではなく、優先弁済権を確保するための手段であるというような考え方になってきています。したがって、こうした立場からは、担保価格は将来その被担保債権が回収できなくなったときに、それを処分することによって保全できる金額の一応の目安をたてることであると考えられています。
担保をとる形態からみても、金融上の担保の場合には、物的担保とともに連帯保証人をつけることが一般に行なわれていて、全面的に物的担保にのみ依存することは比較的少ないと考えられます。これは、上記のような考え方からでてきているわけで、この立場からすれば、仮に担保価格が時価より低くなったとしても、それが一時的な現象であって、営業が順調であるならば、取り急いで対策を講じるまでの心配はないとも考えうるわけです。
しかし立場をかえて、抵当金融的な考え方からいえば、担保されるべき全期間を通じて、担保価格をもって被担保債権額が保全されるものでなければならないため、掛目を割った値下り分については、追加担保を徴求することが具体的な課題になってきます。
2部上場株でしかも株価の変動の激しい株式を評価するに当たっては、よほどの慎重な配意が必要であって、1部上場の優良銘柄と同じ態度と方法で評価することは、自らリスクを背負うことを認めることになります。変動の激しい株価について基準となる評価額を求めるときには、単に基準日の終値などとしないで、過去のある期間の高値と安値の平均値をとるとか、あるいは基準日前数日間の終値の平均値を求めてこれを評価額にするといった、いくつかの方法が考えられます。また掛日にしても、2部上場株の場合には1部上場株より低い掛目になっていることが多いようですし、さらに相場の変動の激しい株価に対する掛目は、それだけきつくなってくることは当然であるといえるわけです。こうした場合には、全く個別的に掛目を考慮すべきで、一般的な基準などにこだわることは、無用なことといわねばなりません。
しかし、このように慎重に担保価格を求めても、なお掛目を割るような時価の下落に遭遇したような場合には、必要に応じて追加担保を徴求することになります。金融機関の場合には、融質だけの取引というのはほとんどないため、預金などを見返りとしたり、あるいは引当への対象とするものが手元にあるのが普通です。またほかの場合に比べて、信用調査も行き届いているため、追加担保の徴求も比較的に可能なケースが多いと考えられます。
不動産が担保になっている場合には、通常は、不動産の価格が年々上がるため、特に土地の価格の高騰によって、評価額が適正であるがぎり、掛目を割るような価格の低落はあまりないだろうと考えられますが、権利の移動によって価格に大きな変動が生じることは、十分考えられるところです。したがって、ます評価に当たって、そのリスクを考慮することが必要です。
不動産を評価する場合には、将来における価格の変動に関する予測は必ず検討されねばならないことですが、予測のとどかない公害や、災害の発生などによって、価格の下落をまねく場合も考えられます。しかし、評価が適正であれば、多くの場合、こうしたマイナス要因による価格の低落はだいたい掛目を乗じることによってカバーされている場合が多く、もし掛目をすら割っているようなときは、評価額自体が地価の上昇に期待しすぎたところに原因が求められるようです。
権利の移転に基づく価格の変動の生じる可能性は、常に内在しています。例えば、宅地には借地権が、建物には借家権が付着する可能性はいつでもあり、こうした権利が設定されると、所有権者に帰属する権利は非常に弱くなりその価格は半分以下に減少してしまうのが通常です。万一の場合の競売処分なども容易でないことになります。また借地上の建物を担保にとった場合には、地代の不払いや転貸によって、借地権が消滅するといった危険もあります。そこで、掛目を割るような価格の低下に対しては、必要に応じて追加担保を徴求することになりますが、あらかじめこうした価格の低落を予測して評価すること、もしくは、こうした事態に付する対抗手段を講じておくことも考えられてくるわけです。
例えば、不動産を担保にとる場合に、単に抵当権の設定だけではなく、停止条件付代物弁済契約とか、賃借権設定契約などの仮登記をつけることが、かなり広く行なわれています。
債務者が担保物件を賃貸しようとしているときに、抵当権に基づいてこれを阻止することは相当むずかしいことですが、停止条件付賃貸借契約があれば、この賃借権に基づいて賃貸禁止の仮処分をすることは比較的容易であるため、担保価格の下落を防ぐ手段にもなるわけです。
しかし、融資期間中に担保不動産が価格の低下によって掛目を割るようなことのないのが最も望ましいことです。万一掛目を割ることがあれば、必要に応じて追加担保をとればよいのですが、こうした事態を避けるためには、あらかじめ万全の評価と適切な掛目を適用すること、もしくは金融抵当的に担保不動産にのみ依存することなく、営業収入などの返済財源に重点をおくような行き方をとることが賢明であろうと考えられます。

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