融通手形が出る原因と種類

通常、商業手形というのは商品の代金として振出されるもの、つまり商取引の裏付けがあります。ところが融通手形というのは、この商取引の裏付けがないものをいいます。企業の資金繰り上の不足資金は借入によることになりますが、銀行としては、単名貸出しよりも商取引の裏付けがあり複数の債務者となる手形割引の方が、回収の安全性から好ましく、単名貸金は商手割引に比べて貸出条件が厳しくなります。そこで企業側は、つい商業手形を偽装した手形、つまり融通手形の割引によって金融をつけることになるわけです。これまで融通手形は仲間取引の多い業界でよくみられましたが、近年では全業界に及び、しかもなかなか巧妙になってきています。

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書合手形
X社とY社が互いに手形を振出して交換し、それぞれの取引銀行で割引いて換金するものです。ときには、一方は割引かずに期日まで持っていることもあります。書合手形は融通手形の最も多い例です。

貸手形
相手会社に商品代金でもないのに手形を貸すもの、借りた企業はこの手形を自己の取引銀行で割引いて換金します。期日になると、もちろん借りた方が貸した企業に送金するなどして決済するわけです。うまく期日どおり決済できればよいのですが、これができないと、決済資金のためにまた融手を振出すということになります。なお、これは前渡金の手形払と混同されやすいものです。

借手形
貸手形を借りた方からみた場合、借手形となります。前受手形と判別しにくいものです。

売上高と回収条件から受取手形の、また仕入高と支払条件から支払手形の正常残高をそれぞれつかみ、これを上回るものは焦付ないし融手ということになります。
例えば月商1億円、回収条件は100% 手形、サイト90日であるとすれば、受取手形の正常な残高は1億円×3カ月=3億円です。このとき、仮に受取手形が4億円あるとすれば、差額1億円は融手ないし焦付ということになります。もっとも、現実にはこう単純に算出できませんが、考え方としてはこのようになるべきです。
割引手形の残高は、季節変動など商いの繁閑に応じて増減するのが通例です。したがって、割引枠の残高がいつも同じで弾力性がないのは、割引枠が空くべきときにも融手を割引いて、必要資金を調達している懸念があります。
取引の流れに逆行するいわゆる逆筋の手形や、平常その企業と取引のない先からの受手は、融手の懸念があります。もっとも逆筋、つまり仕入先からの手形であっても、リベートや値引分を手形で受取ることが間々あります。しかし、これらを手形で決済すること自体、あまり感心したことではありません。
これは銀行員でないとわかりませんが、例えば月商1,000万円の企業は、現金回収、手形回収を合計すればおおむね1,000万円内外の代金回収になり、手形回収分を割引して、その代り金を当座に入金すれば、当座の月間入金高は月商に近いはずです。したがって、当座入金高が商い高を大きく上回る場合は、融手資金が混入している場合が多いものです。もっとも、この場合も設備借入金の入金などもありますから、このようなものは除外して考えるべきであることはいうまでもありません。
真正の受取手形は売掛金勘定から受取手形勘定に転記され、また支払手形は買掛金勘定から支払手形勘定に転記されるのですから、その関連性を確かめ、この手順を通っていない受取手形や支払手形は、いちおう融通手形とみて成閃を確かめます。
受取手形と支払手形の全額と期日が互いに一致ないし近似している場合は、書合手形の懸念があります。
融手を記帳する場合、受取手形勘定と仮受金勘定、支払手形勘定と仮払金勘定がそれぞれ見合っている場合が多いですから、仮払金、仮受金の内容を検討します。この場合でも、期末パランスには仮払金と仮受金を相殺している例が多いため、期末残高にないからといって安心できません。期中の出入まで調べるべきです。
このほかにも売上伝票など証憑書類とつきあわせたり、送金、入金の動きをみるなどの方法があろうかと思いますが、要は、企業の日常資金の流れ、決済条件、商い筋の顔ぶれなど、企業の実体を常日頃から正しく把握しておくことが最も肝要です。

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