経営者と企業活動の運転資金

経営者などは、また材料代、人件費などの支払にあてられる資金を運転資金といっていることがあります。この場合では材料代、人件費などの支払にあてられる資金を運転資金というわけですが、まず問題となるのは、材料代、人件費などの支払といいますが、どの支払までを運転資金というかということです。これについては、材料代および人件費などの支払のほかは、公告宣伝費、運送費、利息など、その他の諸費用の支払までとすべきであると思われます。つまり、材料代、人件費などの支払というのは、材料代支払、人件費支払、その他諸経費の支払であって、費用の支払とよぶべきものです。また、そのように運転資金を解すると、運転資金が足りないなどということが考えられないことになります。というのは、運転資金が足りないとか、運転資金が楽でよいという場合には、なにかの収入と対比して、費用の支払が問題にされているわけですが、この場合には、費用の支払に対比される何かの収入が全然問題にされないで、ただ費用の支払だけを問題にしているからです。

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以上のように、運転資金という言葉は、様々な意味に解されていますが、いずれの解釈の仕方にも問題があります。運転資金はまた、企業活動によって生じる資金であり、企業活動に必要な資金であると解することができます。
企業活動としては、製品の製造販売という営業活動と、投資などの営業外活動があります。このような企業活動によって、まず収入が生じてきます。収益の収入がそれで、収益の収入には、売上高の収入、つまり完上収入と営業外収益の収入の2つがあるわけです。
また、企業活動によって支出が生じてきます。材料費、営業費などの製造費用の支払、販売費一般管理費の支払、営業外費用の支払という費用の支払がそれで、この費用の支払は、材料代支払、人件費支払、その他諸費用の支払の3つに分けることもできます。
このような企業活動による収入と支出を運転資金とみるのです。つまり、次のような式で示されるものを運転資金とするわけです。このような意味の運転資金は、上述のような意味の運転資金とは異なったものですから、運転資金という言葉を使わないで、経営収支、経常資金などとよぶようにしてもかまいません。

運転資金=売上収入十営業外収益の収入一費用の支払

企業活動の収支からみる運転資金が、アメリカでいう運転資本とはまったく異なったものであることはいうまでもありません。また一部の経営者などのいう意味の運転資金も、費用の支払だけを問題にして、完上収入と営業外収益の収入を問題にしないもので、これともかなり異なったものです。また銀行などでいう意味の運転資金とも、もちろん異なったものです。
収支のとらえ方には、伝票などによって、収入、支出の額を直接につかむ方法と、関連数値によって、収入、支出の額を間接につかむ方法とがありますが、間接法によって、当期の売上収入、営業外収益の収入、および費用の支払の額を計算してみると、次のようになります。

当期売上収入=当期売上高一(期末売掛債権一期首売掛債権)+(期末前受金一期首前受金)
当期営業外取益の収入=当期営業外収益一取入の生じない収益一(期末未収収益一期首未収収益)+(期末前受取益一期首前受収益)
当期費用支払=当期費用(費用合計)一支払の生じない費用十(期末棚卸資産−期首棚卸資産)+(期末前払費用−期首前払費用)+(期末前渡金一期首前渡金)−(期末買掛債務−期首買掛債務)−(期末末払費用一期首未払費用)

このような当期の売上収入および営業外収益の収入合計と費用の支払との差が、運転資金であるため、運転資金は、次の式のようになります。

運転資金=売上収入十営業外取益の収入一費用の支払
=売上高十営業外収益一費用合計十支払の生じない費用一収入の生じない収益一(期未売掛債権一期首売掛債権)一(期末棚卸資産一期首棚卸資産)一(期末前払費用一期首前払費用)一(期未前渡金一期首前渡金)+(期末買掛債務期首買掛債務)+(期末未払費用一期首末払費用)+(期末前受金一期首前受金)
=税引前純利益十支払の生じない費用一収入の生じない取益一(期末売掛債権一期首売掛債権)−(期末棚卸資産一期首棚卸資産)一(期未前払費用一期首前払費用)一(期末前渡金一期首前渡金)+(期末買掛債務一期首買掛債務)+(期末末払費用一期首未払費用)+(期末前受金一期首前受金)
このような売上収入および営業外収益の収入の合計と費用の支払とを比べて、収入超過になる場合には、運転資金は余ることになりますが、それが支払超過になる場合には、運転資金が足りないことになります。そのような意味の運転資金の不足額は、上の式を次のように変形すると算出できることになります。

運転資金不足額=(期末売掛債権一期首売掛債権)+(期末棚卸資産−期首棚卸資産)+(期末前払費用一期首前払費用)+(期末前渡金一期首前渡金)−(期未買掛債務一期首買掛債務)一(期末未払費用一期首未払費用)一(期未前受金−期首前受金)−(税引前純利益十支払の生じない費用一収入の生じない収益)
=(A)(期末売掛債権十期末棚卸資産+期末前払費用十期末前渡金)一(期末買掛債務+期末末払費用十期末前受金十税引前純利益十支払の生じない費用一収入の生じない収益)ー(B)(期首売掛債権十期首棚卸資産十期首前払費用十期末前渡金)−(期首買掛債務十期首未払費十期首前受金)

この式の(B)の期首の売掛債権、棚卸資産、前払費用および前渡金の合計と買掛債権、未払費用および前受金の合計との差を短期借入金とすると、この式は、次のようになります。

運転資金不足額=(A)(期末)(売掛債権十棚卸資産十前払費用十前渡金)一(買掛債務十未払費用十前受金十支払の生じない費用控除前利益)一期首短期仕入金

運転資金の不足領、したがってまた、運転資金の所要額は、このような式で示されることになりますが、これを前述の銀行などでいう運転資金と比べてみると、かなり違いがみられます。特に大きな違いは、この算式では、支払の生じない費用控除前の利益も、売掛債権、棚卸資産などから控除しますが、銀行などでいう運転資金の場合では、それが控除されていないという点でしょう。考え方によっては、法人税などの税金、配当、役員賞与も、費用とみることができ、したがって、税金、配当,役員賞与の支払等いわゆる決算関係の支払も、費用の支払とみることができますが、純利益のほとんど全部が支払われることになりますから、銀行などでは、これを無視して運転資金を計算するものということもできます。決算関係の支払も、費用の支払に計入して、運転資金を計算してもよいのですが、しかし、支払の生じない費用控除前の利益の額と決算資金関係の支払額とは、もちろん一致しないために、正確には、このような算式で運転資金を計算するのがよいでしょう。

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