運転資金の考え方

運転質金という言葉は、日常の用語として使われていますが、それだけにまた、様々な意味に使われています。どういう意味に使われているかを、まず整理してみることが必要です。
アメリカでは、運転貸本(working capital)という言葉がありますが、まずアメリカでいう運転資本を運転資金ということがあります。日本の財務管理などに関する文献には、運転資金をこの意味に解していることがあります。
アメリカでも、運転資本という言葉は、広義に解されたり、狭義に解されたりしていますが、普通は、広義では、流動資産の総額を運転資本といいます。これを特に総運転資本(gross working capital)といっています。狭義では、流動資産から流動負債を引いた残りを運転資本といいます。これを特に正味運転資本、純運転資本(net working capital)といっています。
このようにアメリカでは、流動資産の総額、特に流動資産から流動負債を引いた残りを運転資本というわけですが、流動資産には、固定資産関係の未収金などが入っていることがあり、流動負債にも、固定資産関係の未払金、支払手形などが入っていることがあります。

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業種によっては、流動資産と流動負債を比べてみると、流動資産が少ないことがあること、したがって、運転資本がマイナスになることもあります。流動資産、特に流動負債を引いた残りをどういう意味で運転資本というのが、説明ができません。それは運転資本ではなくて、流動資本ともよぶべきものです。
負債の支払能力を表わす比率として、流動比率というものがありますが、これは流動資産と流動負債とを分子分母の形で対比したものです。これに対して、運転資本は流動資産と流動負債とを差引きの形で対比したものです。流動比率と運転資本とは、対比の仕方が異なるだけであって、いずれも流動資産を流動負債と対比してみるもの、流動負債の支払に当たって流動資産をどの程度もっているかをみようとするものであるということができます。運転資本は、そういう意味での負債の支払能力を表すものである、というべきです。
次に、流動資産と流動負債とをしぼって、企業活動によって生じる流動資産と流動負債とし、そのような流動資産と流動負債との差を運転資金ということがあります。日本のの銀行などでは、運転資金をこのような意味に解しています。
企業活動によって生じる流動資産は、受取手形および売掛金、棚卸資産、前払費用、前渡金、未収収益であり、また企業活動によって生じる流動負債は、支払手形、および買掛金、未払費用、前受金、前受収益です。したがって、銀行などでは、運転資金を次のように解することがあるわけです。これは、そのような形で運転資金をとらえようとするものですから、静態的運転資金ということもできます。

運転資金=(売掛債権十棚卸資産+前払費用+前渡金十末取収益)−(買掛債務+末払費用十前受金十前受収益)

運転資金をこのように解するときには企業活動によって必要になる資金、したがって、運転資金という意味を考えることができます。しかし、このような意味の運転資金については、特にに次のような点が問題になります。
現金預金には、企業活動によって生じるものもありますから、現金預金を運転資金の計算に考慮に入れるかどうか。
売掛債権とは、未収の売上代金であって、その売上高には、純利益が含まれています。純利益の部分をも加えた売掛債権の全額ほど、運転資金が必要になるかどうか、もし売掛債権から純利益の部分を控除するとすれば、どのようにして控除するか、また割引手形と裏書譲渡の手形は受取手形に加えるかどうか。
棚卸資産のうち、製品および仕掛品の棚卸高には、減価償却費が計入されています。減価償却費は支払の生じない費用です。減価償却費が計入されている製品および仕掛品の全額ほど、運転資金が必要になるかどうか、もし製品および仕掛品の棚卸高から減価償却費の部分を控除するとすれば、どのようにして控除するか。
売掛債権、棚卸資産などから買掛債務、未払費用などを引いて、運転資金を計算するわけですが、当期純利益も企業活動によって生じるものですから、買掛債務、未払費用、前受金、前受収益とともに、売掛債権、棚卸資産などから控除しなければならないのではないか、もし当期純利益をも控除するようにするとすれば、この当期純利益は、税引後の利益とするか、税引前の利益とするか、さらに減価償却費など、支払の生じない費用を控除する前の利益とするかです。

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