支払能力の動態的と静態的の比較

支払能力のつかみ方には、収入と支払とを対比して、収入でもって支払をする力があるかどうかをみるようにする動態的なつかみ方と、一時点における支払義務とその支払にあてうる支払手段とを対比して、支払義務を支払手段でもって支払をする力があるかどうかをみるようにする静態的なつかみ方との2つがあります。この2つの方法を比較してみると、支払能力の動態的なつかみ方のほうは、収入、特に売上収入のような経常収入でもって、材料代など、経常の支払ができるかどうか、また借入金の返済など、経常外の支払ができるかどうか、そのような意味での支払能力、いわば返済能力があるかどうかをみようとするものですが、これに対して、支払能力の静態的なつかみ方のほうは、流動負債などのような支払義務に対して、流動資産などのような支払手段をどの程度もっているか、流動資産などの支払手段でもって支払義務の支払ができるかどうかを見ようとするものです。

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支払能力の静態的なつかみ方の場合では、流動資産などを支払手段とみるわけですが、流動資産を支払手段とすると、流動資産のうちの現金預金は、すぐ支払にあてることができますが、売掛債権、棚卸資産などは、現金に変えないと、支払にあてることができません。したがって、支払能力の静態的なつかみ方というのは、一般的にいって、流動資産などの資産を処分して現金に変え、それでもって流動負債などの支払義務がれだけ支払えるかをみようとするものであるともいえます。流動資産は、固定資産に比べて、処分して現金に変えることが容易です。また現在は、総常収支の状況が良好で、経常収入で、様々な支払が十分できるとしても、将来、この状況が悪化して、支払不能になるような場合もあるわけですから、金融機関としては、このような静態的な支払能力を問題にすることも必要です。ただこれは、支払手段を処分して現金に変え、それでもって支払義務を支払っていく力があるかどうか、いわば弁済能力があるかどうかをみようとするものであるということは忘れてはななりません。
流動性という言葉は、様々な意味に使われています。まず、貸借対照、表でどういう順序で諸料目を配列していくかという諸料目の配列の仕方に、流動性配列法というのがあります。これは流動性の高い科目から配列していくというものですが、この場合の流動性とは、現金および預金に変わる早さということであって、個々の資産、個々の負債、資本のもつ性格ですから、絶対的流動性といいうるものです。これに対して、相対的流動性といいうるものがあります。これは、一時点における支払義務と支払手段との対比、また一期間における収入と支払との対比です。このような相対的流動性を普通、単に流動性といっています。
これに対して、支払能力というのは、材料代などや借入金の返済など、様々な支払ができるかどうかということであって、そのつかみ方として、一期間における収入と支払との対比と、一時点における支払義務と支払手段との対比の2つがあります。したがって、流動性と支払能力とは同じものであるということもできます。
なお、安全性という言葉もよく使われます。この言葉も様々な意味に用いることができますが、静熊的流動性は、支払義者に対して、どれだけ支払手段をもっているかということであって、これを安全性ということもできます。
支払能力の分析の方法としても、財務諸表などから、様々な比率を出し、比率で支払能力をつかむという方法と、資金移動表など、資金表を作成したりして支払能力をつかむ方法があリます。
比率分析では、どういう手順で支払能力を分析するか、比率分析の手順といったようなものを示してみます。

支払能力の動態的な分析
 まず経常収支比率を出してみること
 ついで売掛債権、製品、仕掛品および原利材料の回転期間と買掛債務の回転期間をみるようにすること、経常収支比率がなぜ高いか、その原因の所在を、これらの回転期間でつかむようにすること
支払能力の静態的な分折
 まず流動比率をみること
 ついで、当座比率とともに、固定比率をみるようにすること
 また資本負債比率または自己資本構成比率をみるようにすること

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