業界調査の目的と注意事項

業界調査の目的は、対象企業の属する業界の現状、動向および見通しを把握して問題点を探るとともに、対象企業の地位、特色を知って、経営方針の適否、設備、販売組織などの優劣を判断する手がかりを得ることにあります。業界調査に当たっては、次の点に注意しなければなりません。
第1に調査資料の収集、整理ということです。業界調査にはその企業が提出した資料だけでは不十分で、官庁、業界団体、同業他社などからの資料、情報の入手、あるいは幅広く内外の文献の調査が必要です。これらは平素から取集、整理しておかなげればなりません。
第2に資料利用に当たっての注意です。官庁、業界団体、研究機関などから入手した資料は、その調査目的に応じて、金融機関が必要とする客観的な見方とは必ずしも一致しない場合もあるため、利用に当たっては、さらに総合的な検討分析を行ない、必要によっては整理、加工し、金融機関としての判断を下さなければなりません。
第3に調査項目の選定があります。もちろん、調査項目について綱羅的に調査することも,それなりの意味はありますが、通常は、業界の問題点に応じて、適宜重点を置いて調査すればよいでしょう。なお、商品知識、製造技術、法的な規制、助成措置などの基礎的な知識は、あらかじめもっておかなければなりません。
以上、業界調査項目の説明に先立って、一般的注意事項について述べてきましたが、調査項目としては、まず、業界の現状と問題点、ついで、見通しと需要予測、対象企業の地位、特色について検討します。

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業界の現状は、その特質に応じて調査項目や重点をおきかえなければなりませんが、一般的には、業界構造、需給、原材料、流通機構、価格、設備、財務状況などについて調査すればよいでしょう。
業界構造については、その業界の企業数、規模の分布、地域別分布などとその推移を調べ、その推移の背後にある諸条件を深ります。これにより、その業界が、例えば、大規模企業の寡占状態にあり、今後も安定的に推移する。中小企業が大部分であるが、次第に大手に統合されつつあるなどの方向を把握することができます。他のすべての信用調査項目検討の際に、このような基本的動向を念頭において判断を補足することが必要です。
生産もしくは販売の推移は、長期的な趨勢と短期的な変動が合成された結果ですから、長短両面の角度からの検討が必要になります。まず、主製品もしくは主要部門ごとに、生産、販売の年次統計により、長期的な推移を把握します。この場合、単に計数的な理解にとどまらず、生活水準の向上、生活様式の変化、労働市場の変化、新技術の開発などによる需要、供給再面の構造の変化が、どのようにその産業の成長、衰退に影響を与えてえてきたかを考えなければなりません。次に短期的な視野から需給のバランスをみるため、生産、販売および在庫統計により、製品ごとに景気動向、季節変動などと関連させて調査することが必要です。
原材料については、仕入先、仕入の難易、価格動向などについて検討します。特に原材料の輪入依存度が高い場合には、海外の原材料事情についての調査が必要であり、また、輸入価格と国内価格の比較も大切です。次に原単位についてもできるだけ調査して下さい。対象企業と業界平均の原単位を知ることにより、技術水準、生産管理の較差をうかがうことができます。
流通機構は、産業によって様々な形態を異にしており、その実態を把握する必要があります。特に最近では自由化を契機として、各業界とも既存の流通秩序の再編成を追られています。したがって、流通機構の調査は、需要動向の変化と今後の見通しを得るために重要な項目となっています。販売方法、販売組織、販売系列などを調査し、どのような方向に動いているかを把握することが必要です。
価格については、主製品別にその推移をみて個格変動の要因を検討して、今後の動向について一応の判断を得ることが必要です。価格は、理論的には、需給関係によって決定されるので、前述の需給椎移や在庫状況と関連させて考えなければなりません。また、価格は経済外的な要因、例えば税制、カルテル行為などにも左右されるので、これらとの関連も考慮する必要があります。さらに、その製品の国際競争力をみるために、できれば国際価格との比較も必要です。採算については、単位当たりの粗利益の推移を知り、さらに企業規模によるその較差を把握できると非常に効果的です。もっとも、採算に関する賛料は、各業界とも厳秘に属する事項で、容易には入手できませんが、できるだけ努力することが必要です。
その業界の設備について、量的、質的な動向を検討し、対象企業の設備を評価する基準とします。まず、業界の総合的な設備能力を調べ、需要動向と比べ過剰設備ではないかを検討します。この場合、設備能力といっても、稼働日数/月、稼働時間/日、交替制などによって異なってくるために、算定の基準を明らかにしておく必要があります。また、各設備間の格力バランスを報べることも大切なことです。設備の質的な検討については、物理的、経済的にどの程度陣腐化しているかを把握しておく必要があります。
以上を前提として、業界の設備投資の規模、効果、特徴、誘発要囚など設備投資動向を調査しなければなりません。これは、対象企業の設備計画の判断にもつながることで大切なことです。
以上の業界動向を計数的に集約するものとして、損益、資産状況の検討も必要です。企業の規模較差が大きい場合には、対象企業と同規模の企業について調査します。業界平均の財務数値については、日銀、通産省、中小企業庁のほか民間金融機関でも刊行していますから、適宜利用するとよいでしょう。

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