経営者の経営能力調査

企業の営業状況なり財務状況については、様々な数的資料が発表され、その入手にまず事欠かない場合が多いのですが、肝心の企業を動かす人的要素のきめ手たる経営者の人物、能力については、計数的に評価しにくいため、非常に調べにくく、突止めにくいものになっています。そのため信用調書にまとめる場合も、経営のところは、ただ役員の氏名、年齢、肩書と簡単な経歴を書きつらねる程度でお茶を濁す例をよく見かけますが、これでは経営者を調査したことにはなりません。もっとも、万事は事業成績のよしあしがモノをいうわけで、それに現われた実績いかんによって経営力の判定もおのずからできるようなものではありますが、それは非常に生ぬるい見方です。たとえ難しくても、経営者の評価判定はぜひ鋭く固めるべきです。これは全企業体についていえますが、特に中小企業になるほどその重要性が一段と高まってきます。

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経営者の人物、能力を評定する際の概念的な基準について、ポイントだけを列挙すると、次のとおりになります。
人格、人柄。その企業のもつ社会的使命を重視し、絶対の責任感と誠実、熟意をもって、事業運営に全精力を注入しているかどうか。
独創力、企画力。営業面では他社の追随できないきめ手製品を持つとともに、全般的にその企業独特の自立性を発揮するよう、たえず創意工夫による開発努力を続けて、その実績をあげていろかどうか。
経営方針のバランス。経営方針では、最も理想的とされる堅実かつ積極的という並行型を、一方にひどく偏することなく、適切な組み合せのもとにすすめているかどうか。
洞察力、実行力
採算性の追求と効率的経営に徹しながら、同時に時流の変化に即応して常に機動的、弾力的な態勢をたもち、なお視野ひろく将来に対する先見性と決定方針に対する実行力を有しているかどうか。
以上のうち、人格、人柄は経営者の基本的条件ともいうべきもので、独創力、企画力は現在の厳しい企業間競争と急激な環境の変化に耐えぬくための、より切実で真剣な条件となっています。結局、こうした基準に照らして、相手方経営者を評価判定することになるわけですが、それにはやはり先方と直接面接してその人物をしっかり見ぬくことが肝要です。
これと関連して、有価証券報告書などにおける役員の項の記載を手がかりに、経営陣の構成内容および結束ぶりを検討することも、たいへん参考になります。特にメーカーの場合、役員の事務系と技術系の振合い、あるいは年齢水準等を確かめることは、生産、販売、経理の三位一体関係のすすみ具合、あるいは年齢水準の老若からくる感覚や活動力の開きなどを通じて、この面からの経営力判定が加わることになります。
例えば、戦前から聞こえた機械メーカーの名門某社は、役員総数24名、うち技術系18名、事務系6名と技術系が圧倒的多数を占め、平均年齢は62歳とかなり高齢です。技術重視、組織力尊重の伝統精神は見事ですが、スタッフの老齢化と相まって、近代的感覚と民需向け商売の展開では必ずしも十分とはいえません。これに対し、戦後新興ながら躍進つづきの車両メーカー某社は、役員12名、うち技術系6名、事務系6名とバランスがとれ、平均年齢は51歳と前例の会社よりは10年若いのです。いきおい技術充実と並行した商売上手で売りひろげ、スタッフの若さからくる近代感覚と意欲的活動も見事で、前例の会社に比べて、従業員は2割程度ですが売上高はその7割見当に達してしており、業種の相連はあるにもせよ、その稼動力、販売力の旺盛さが注目されます。これは、ひいては経営上のあらゆる部門の成果にまでおよんでくるものと思われます。

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