大企業と中小企業調査の相違

大企業であろうと中小企業であろうと、企業として経営活動を行なっていることに違いはないわけであるため、その信用調査にも基本的に相違はないわけです。ただ、中小企業は大企業と異なったいくつかの面をもっているため、その調査に当たって注意しなければならないことがいくつかあります。中小企業調査では、そのようないくつかの問題を意識して調査し、また判断しないと、誤った結論を導くことになるために、その主要なものをあげてみると、大企業では、経営を専門とする経営者が組織を使用して経営を行なっています。したがって、経営者の1人2人が交替したからといって、経営活動にそれほどの影響がないのが普通です。中小企業でも様々な組織があり、そこで仕事が行なわれていることに違いはありませんが、経営者は同時にその企業の所有者であるということから、形式的に多数の経営者がおり、組織があっても、実際はこの所有者の単独の意思ですべてが決定されることが多いようです、このことは、有能な経営者が存在すれば、機動性があるだけに中小企業の方が飛躍的に発展を遂げる可能性が強く、中小企業の1つの強味になっています。しかし、逆に無能な経営者の場合には、発展しないのみならず、経営に破綻をきたすことも多いということになりますが、専門経営者が少ないだけに、このような企業が中小企業ではかなり数多く存在します。
このため、中小企業調査では、経営者の能力の優劣に対する判断に、大企業調査の場合よりもはるかに大きな比重をおかなくてはならないことになります。
また、この意味で、適当な後継者がいるかどうかということも、中小企業調査では重要な調査項目になります。

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以前は中小企業の給与は大企業よりも低いのが常識でしたが、若年労働力不足の現在では、この格差は非常に縮まりました。しかし、それでも人件費負担能力の問題から、なお格差がある場合が多く、また、厚生面や先行きの安全性が劣るとかいうことから、中小企業の従業員確保の問題は大企業以上に重要です。また、数の問題だけでなく、同様の理由から質的にも劣っている場合が多いわけです。
必要な従業員数が碓保できるか、その質を向上できるかどうかは、その企業の将来に大きな影響を持つようになってきているので、人員確保、質の向上にどのような配慮がなされているかについて調査することが中小企業調査では重要な項目となります。
以前は、設備能力が劣っていても、安い労働力を十分に使用することによって、採算をとることが可能でしたが、給与が生産性の向上と無関係に大企業の水準に近づけられるに至った現在、このままでは採算がとれなくなり、生産生の向上によりこれをカバーしなければならなくなってきました。これは労働力をできるだけ設備能力におきかえるということです。したがって、設備合理化の努力が取益性、流動性に悪影響を及ぽすことなく行なわれているかどうかが、中小企業調査ではとくに重要な項目となってきています。
また、大企業の下請会社では、親会社の意向によって設備投資を行ない、結果的に過剰設備になる場合も多く、収益性、流動性が損われる場合があるため注意が必要です。
メーカーである中小企業の場合には、販売先が数少なく、あるいは特定のものへの販売が大きな比重を占めている場合がかなりあります。このようなときは、主要販売先からの圧力によって、価格、代金回収期間等で不利な条件を押しつけられることが多く、また、その販売先が倒産したときには、連鎖倒産するということにもなりかねないために、販売先との関係、その販売先の信用度についても十分調査することが必要です。
大企業では系列の主取引銀行が存在し、最後まで必要資金を確保してもらえる場合が多いのですが、中小企業ではこのようなものがない場合が多く、金融環境の変化等によっては外部資金供給源を断たれるという場合が多いため、取引銀行との関係についても、特に注意して調査することが必要です。
財務に関する数字は、一般に大企業と中小企業ではその信頼性に大きな違いがあります。大企業でも財務諸表に粉飾が行なわれる場合がありますが、これは中小企業に比べれば大変少ないといえます。少なくとも株式が公開されているような企業では、公認会計士による監査が行なわれており、粉飾の余地が少なく、まして必要な帳簿類が存在しないということはないわけですが、中小企業では、公認会計士の監査がないということもあり、税務上、銀行取引上の都合から数字が粉飾されることは決して珍しいことではありません。また、その能力上からも十分な帳簿を備えていない場合も非常に多いわけです。
したがって、提出された数字は、実査あるいは財務諸表分析の過程で、何らかの方法によって確認することが必要となります。中小企業調査でこれが行なわれていない場合には、いかに詳細に分折がなされていてもその結果を信用するわけにはいきません。また、帳簿が不備といったような理由で十分な資料が得られないような場合には、調査の過程で自ら作成したり推定したりすることも必要となりますが、この場合には推定であることを意識して判断することが必要です。

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