調査対象企業の検討

調査対象企業の実査、問合せが終ったならば、必要な具体的調査は一応終ったわけで、総合的検討に入りますが、ここでは、次のような点に留意することが必要です。
実体面の調査を通じて知りえたことが、財務面にいかに反映されているかに注意しながら、企業全体の検討を行なうことが必要です。財務諸表は経営活動の成果を結果的に示しているものであるため、信用調査ではこれの分析結果が最後の決め手になります。しかし、財務諸表分析をいかに綿密に行なっても、それだけで正しい判断はできません。分析結果の数字はあくまでも数字であって、その数字がでてきた原因を最終的に説明することはできないからです。
例えば、売上高が増加したのは販売価格の上昇によったのか販売量の増加によったのかということは、分析によって知ることができますが、販売価格が上昇したり販売量が増加したのはなぜかということを知ることはできません。これを説明するのは、その製品の需給関係、販売先との関係等であり、実体面の調査によってのみ明らかにすることができるわけです。したがって、実体面の調査結果と財務諸表分析の結果を相互に反映させながら、全体の状況を明らかにしていくことが必要なわけです。

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財務諸表分析に現われた一つの現象が、実体面の一つの原因から生じているとは限りません。例えば、販売価格の上昇は業界全体としての需給逼迫だけによっている場合もありますが、その企業の製品の品質のよいこと、あるいは販売先との特殊な人的、資本的つながりという原因が同時に存在している場合もあります。したがって、一つの数字を解択するには、一つの原因だけにとらわれることなく、ほかにも原因があるのではないかという点に注意することが必要です。
また、財務諸表分析上のある現象の原因になっていることは、いくつもの現象の原因になっていることが多いものです。例えば、製品の品質が他の同業者よりも優れているということが、販売価格上昇の原因になっているという場合、この優良品質ということは、このほかに販売量の増加、売掛債権回転期間、製品回転期間の短縮等の原因にもなっている場合が多いものです。このようにいくつもの現象の原因になり、それが収益性、流動性に大きな影響を与えている場合、それがその企業の経営成果の主要な原因であるといえます。したがって、収益性、流動性に影響をもつ種々の現象に最もしばしば原因となり、また、それに及ぼす影響力の大きい事柄が何であるかを把握するように努めることが必要です。
このように実体面と財務面を相互に関連させ、因果関係を調ベ、収益性、流動性への影響を検討していくと、その企業の実体が判断できることになります。
総合的な検討が終われば、具体的な融質申込みの内容が妥当かどうかについて検討することになります。具体的な融資申込は千差万別ですが、普通、運転資金と設備資金に大別され、また、運転資金はさらに使途がなんであるかという点から、季節資金、増加運転資金、減産資金、決算資金等に類別されます。また、返済期間が長期か短期かという点から、長期運転資金と短期運転資金に別けられます。
これらの諸資金の融資の検討をする場合、資金によって重点のおき所が違いますが、一般的にいうと、その企業の状熊からみて使途が妥当かどうか、申込金額が妥当かどうかを事業内容、資金繰りから検討することになります。その結果申込みが妥当であったとすると、次に返済能力があるかどうかを、資金繰り、採算の見込をたてて検討することになります。このような検討によって返済能力があることがわかったとしても、返済は将来の問題であるため、それまでにいかなる不測の事態が発生し返済不能になるかもしれません。このようなときに対処するためには、あらかじめ担保を徴求しておくことが必要です。したがって、担保物件にはどのようなものがあり、どの位の価値があるかを検討しておくことが必要です。また、人的担保としての保証人の保証能力についても検討しておかなくてはなりません。
総合的検討が終わり、その企業の取益性、流動性が把握され、融資の適否が判断されたならば、調書の形にまとめることが必要です。調書は、普通,収益性、流動性の原因になっている実体面の事実および判断が述べられ、次にこれによって数字の解釈をしながら収益性、流動性の分析が行なわれ、その企業の状態、問題点等が述べられます。このようにして判断された実績のうえに立って、融資の適否の検討、判断が述べられ、最後に担保等について記述されることになります。もちろん、その形式、記述の順序について、このとおりである必要は必ずしもないわけですが、要は他人に読ませ正しく理解させることですから、その記述に当たっては、次のような点に留意することが必要です。
文章は簡潔であり、項目別に記述されていなければなりません。調書を読んで検討する場合に、一般に必要とされる諸項目については、格別問題がなくても記載しておく必要があることはもちろんですが、最も重要なことは、結論を導くのに必要な事項に重点をおき、問題点が浮彫りになるよう心掛けることです。このためには、結論を導きだすのに必要とされる主要な原因を2、3にしぼり、常にこの原因を意識しながら記述すること、つまり、筋を通して記述するということが必要であり、これによって始めて読む人に理解させることができるわけです。

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