質権者の権利

質権者たる貸主は、被担保債権全額の弁済を受けるまで、その質物を留置することができます。質権より優先的効力を有する債権者が現れると、質物を留置する権利を失います。これらの権利は、先順位の質権、先順位の抵当権、質権設定前に納期の来た税金債権、各種社会保険の保険料または徴収金債権などがあります。これ以外の債権の実行によって、質物が競売に付せられても、質権者は債権の弁済を受けるまでなお質物を留置して引渡を拒むことができます。質権者には、この外に留置期間中、果実収取権、保管義務、および必要費ならびに有益費の償還請求権があります。質物を留置していても、貸金債権の時効は引続き進行しています。貸主としては、適切に時効中断の処置をとることを忘れてはなりません。質権者は、借主が期限に弁済しないときは、質物から優先弁済を受ける権利があります。民法は、優先弁済の方法として、質流れの方法を許すときは、窮迫した借主が、不当に損害を受けることがあるのを防止するため、これを許さないこととし、かならず競売または法定の手続によらしめることとしました。商事質権については、商人は自己の利害を打算し得るため、弊害が少く、かつ商人は可及的に信用を受けることの容易なことを要するという経済的要求に応じるために、これについての例外を認めており、流質契約も有効としています。多数説は、商法第515条の商行為によって生じた債権を担保するために設定した質権というのにつき制限を認めませんが、立法理由から見ると、第515条は債務者のための商行為によって生じた債権を担保するために設定した質権の意に解するのを正当としています。

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営業質屋については、従来の慣行と、質権実行の簡易化とから、特に例外を認めており、質屋は流失期限を経過した時において、その質物の所有権を取得するとしており、また市町村または公益法人の経営する公益質屋の行為に関しても、流質期間を経過したときは、その質物を処分することができることが認められています。流質契約とは、貸主から金10万円の借金をして、その担保としてダイヤモンドを質入した場合に、予め、もし弁済期に借金を弁済しなかったときは、貸主は当然にそのダイヤモンドの所有権を取得するというような契約であって、これを定めたときも、例外の場合を除きその定めは無効です。弁済期が到来してから後にこのような契約をすることは差支えません。
優先弁済を受ける順序は、動産質権相互の間では、設定の順序により、不動産質権相互間およびこれと抵当権との間では、登記の順序により、権利質権相互の間では、対抗要件成立の順序によります。貸主は、この優先弁済権を行使しないで、民事訴訟法の規定に従って、借主の他の一般財産に対して強制執行をすることもでき、また質物によって充分な満足が得られないときには、なお残額について、一般財産に対して執行することもできます。
質権実行の場合は、競売法の手続により、迅速に執行できますが民事訴訟法の手続によるときは、まず債務名義を獲得するため、訴訟を提起しなければならず、これには多大の日時と費用とを要するので、まず競売法の手続をとるのが普通です。
質権者は、質権設定者の承諾を得た場合には、その承諾の内容にしたがって、さらに質物を再度自己の債権者に、自己の債務の担保として質入することができます。その場合の転質権の要件および内容は、もっぱら転質権承諾契約の内容によって定まります。ところが民法は、一定の要件の下に、質権者は、質権設定者の承諾がなくとも、質物を再度質入れすることができることとしています。
転質権の被担保債権額は、原質権の被担保債権額より小さいこと。転質権の存続期間は、原質権の存続期間内であること。
民法は、原質権者に転質権を認めた反面、原質権者に重い責任を課することとし、原質権者に対し、転質をしなければ生じなかったであろう不可抗力による損害についても、賠償の責を負わしめることとしました。転質権者が質権を実行するには、自己の債権が弁済期に達することを要するのはもちろん、原質権の被担保債権についても弁済期に達していることを必要とします。転質権は原質権が消滅すれば当然に消滅します。

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