根抵当権の一部譲渡と準共有

根抵当権者は、元本の確定前において、根抵当権設定者の承諾を得て、根抵当権の一部を譲渡し、根抵当権を、一部譲渡人とともに準共有することができます。根抵当権の分割譲渡と、この一部譲渡とは名称がよく似ていますが、次の点で根本的に異なっています。つまり、分割譲渡の場合には、1個の根抵当権を2個の根抵当権に分割して、譲渡人と譲受人が同一順位ではあっても、まったく別個独立の根抵当権を1個ずつ持ち、したがって、分割譲渡後の2個の根抵当権の間には、なんの関係も在しません。これに反し、一部譲渡の場合には、1個の根抵当権が2個に分割されるわけではなく、依然として根抵当権1個であって、これを譲渡人と譲受人が共同で所有することになります。したがって、根抵当権の分割譲渡の場合には、2個の根抵当権1個ずつを、2人がそれぞれ単独で所有するのに対して、根抵当権の一部譲渡の場合には、1個の根抵当権を、数人が共有することになるのです。根抵当権の一部が譲渡された場合、各共有者は、優先弁済権を行使する時点において有しているその債権額の割合に応じて弁済を受けることができます。そして、被担保債権元本の確定前に限り、債権額の割合に応じて弁済を受けるという原則と異なる特別の定めをすることができます。

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根抵当権の準共有は、先に述べた根抵当権の一部譲渡によって発生するのみならず、最初から数人が共同で根抵当権を取得した場合、あるいは、単独で持っていた根抵当権が数人の相続人に相続された場合などにも生じます。このような根抵当権の準共有の場合、当然に民法の共有に関する規定が準用され、共有者の1人が根抵当権を放棄した場合には、その権利は当然に、他の共有者に帰属します。しかし、共有根抵当権の分割請求は認められません。そして、元本の確定前であれば、根抵当権の共有者は、他の共有者全員の同意および根抵当権設定者の同意を得て、その権利を譲渡することができます。根抵当権の被担保債権の範囲の変更なども、すべて、共有者全員の同意が必要です。また、共有者の1人についてだけ、元本が確定し得ないことはいうまでもありません。なお、根抵当権を、初めから数人で共有する場合、根抵当権設定契約において、各債権者について、その被担保債権を異なるものとしたり、債務者を異なるものとすることが許されます。
共同根抵当の場合、設定と同時に数個の不動産につき、同一の債権につき共同担保の関係にある登記をした場合に限り、民法392条・393条が適用され、共同根抵当である旨の特別の登記をしなければ、上記両規定は適用されず、各不動産の代価につき、各極度額にいたるまで優先権を行なうことができるとしています。つまり、例えば乙所有のA地とB地に、甲が極度額1000万円の根抵当権を設定した場合、共同根抵当である旨の特別の登記をすると、甲は、A地とB地の競売代金の中から、合計1000万円しか優完弁済を受けられませんが、共同根抵当である旨の特別の登記をしない場合には、A地の競売代金から1000万円、B地の競売代金から1000万円、合計2000万円の優先弁済を受けることができるのです。したがって、共同根抵当の場合、根抵当権者としては、共同担保である旨の特別の登記をしないほうが有利です。また、共同根抵当の登記は、最初から同時に共同根抵当権を設定した場合だけでなく、時を異にして設定した場合にも許されます。そして、このような共同根抵当の登記のある根抵当権について、被担保債権の範囲、債務者、極度額の変更、根抵当権の譲渡あるいは一部譲渡をするためには、すぺて不動産について、その旨の変更登記をしない限り、その効力が生じません。登記のある共同根抵当権の担保すべき元本は、1つの不動産についてのみ確定事由が発生した場合においても確定します。また、共同根抵当の登記のある根抵当権は、一度成立すると、その後、それを変更して、共同根抵当関係に立たない根抵当権にすることはできません。
根抵当権設定者は、元本の確定後、根抵当権の極度額を、現に存する財務の額と、その後2年間に生じるべき利息その他の定期金およぴ債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求できます。この極度額の減額請求は、根抵当権者が、利息や損害金稼ぎをするのを防ぐことを目的とするものです。つまり、既述のとおり、根抵当権が担保すべき元本が確定しても、それは、単にその根抵当権によって担保される元本が、最終的に確定するだけで、根抵当権の被担保債権が、その金額に確定するものではありません。そして根抵当権は、その確定した元本債権について、確定後発生する利息や損害金をも、当然に極度額の範囲内で担保することになります。したがって、担保すべき債権が確定しましたが、まだ極度額までには余剰額がある場合、根抵当権が、直ちに根抵当権を実行しないで確定した元本と利息や損害金の合計額が、極度額に達するまで、引続き、利息や損害金を発生させたうえ、根抵当権を実行せんとすることが考えられますが、極度額の減額請求は、この根抵当権者の企図を妨げるためのものです。共同根抵当の登記のある根抵当権については、1つの不動産について、極度額の減額請求をすれば、当然すべての不動産について、極度額の減額を請求したことになります。もっとも、共同根抵当の登記がしてないものについては、すべての不動産に対する根抵当権ごとに、減額請求をしなければならないことはいうまでもありません。

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