金銭消費貸借の機能

金銭の消費貸借は、その機能として、消費的、非生産的な目的や理由のために行われることが少なくありません。例えば食糧や衣料やその他目常必要な種々の物品の買入のために必要な金銭のように、人々が生存することそのもののために必要とされる資金を調達するために、あるいは、病気や災害やその他結婚、葬儀、教育などの非生産的な目的のために必要とされる不時の出費をまかなうために、金銭を借入れるような場合は、これに該当します。かかる場合においては、もともと借主は金銭をもたざる者なるが故に、金銭の借入をしなければ不時の出費をまかなうことができない状態にあることを通例とするとともに、一般に金額は多くないけれども即座に金銭を必要とし、かつこれを非生産的な目的のために消費をするのであるため、本来は利息は、これを生み出す状況にないものといわなければならないばかりでなく、元本そのものの弁済さえなみなみならぬ苦心をしなければならないのを通常とします。したがって、このような消費貸借においては、貸主と借主との関係は、著しく不均衡となり、借主の社会的地位は貸主のそれに比し、実質的に低下することとなり、例えばいわゆる高利貸が借主の弱点に乗じて不合理な高利をむさぼり、これを窮地に陥れるような場合を生じるに至ります。ここにおいて、民衆の生存権を碓保しようとするならば、様々の社会政策的考慮をなさざるを得なくなるので、利息を制限し、あるいは小口金融の方法を講じ、また金銭債権の強力な作用を緩和するために、調停制度を設ける等の諸種の立法措置がとられなければならなくなりました。

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第2に、金銭の消費貸借の機能として考えられなければならないのは、それが生産的な投資の目的のために行われるということです。つまり、貸主は自己のもてる金銭を資本として投下し、利潤を獲得せんがために、また借主は資本を生産資金として獲得せんがために、消費貸借の方法がとられるのです。この種の消費貸借が上記のような目的をもってなされる以上、有償的に行われるのを通常とするのであり、利息付消費貸借がその典型的な基本形態としてとられるのは当然のことです。この場合において、その利息は、資本より生じる利潤によって計算せられ、その利率も、資本主義経済が本来の自由競争下においていとなまれるかぎり、資本の需要供給の関係によって、合理的におのずから定まるべきものであって、法律によってその利率を制限する実質的理由はすくないものと考えられます。この種の消費貸借においては、資金の供給者たる貸主と、その需要者たる借主とは、経済上の自由競争が本旨とされている限度においては、ともに経済人として社会的に対等な立場に立ち、契約自由の原則により支配されて、利率や弁済条件のような契約条件も当事者双方の自由意思によって決定されるわけですが、資本主義経済が発展して、しだいに資本の集中、独占の傾向が生じるに及んでは、資本家たる貸主は、社会的優位を獲得するようになり、これに反して、借主はおのずから社会的に劣弱の地位におとされ、資金の供給を資本家に求める場合には,資本家が決定するところのほしいままなる貸借条件に拘束されざるを得ないこととなります。
日本においては、小口金融つまり一般民衆が生活資金や事業資金として少額の融通を受けるための機関として最も多く利用されてきたのは、高利貸、質屋および無尽ですが、小口金融においては、借主が貸主に対して弱い立場にあり、貸金の条件が借主の義務の面で不均衡に決定されるおそれが多いので、立法は業者の取締を旨としてなされています。高利貸については、貸金業等の取締に関する法律があり、質屋については、質屋営業法があり、無尺は、日本において古くから庶民間にある相互的な金融手段ですが、いわゆる営業無尽を対象として、金銭給付をしないものについては、以前から制定されている無尽業法によって、また金銭給付をするものについては、相互銀行法が制定されて、これを監督しています。営業無尺でない伝統的な相互扶助的な無尽は、主として農村等で行われているのですが、これについては全国統一的な監督法規を欠き、おおむね各府県が講会取締規則を制定してこれを取締っています。
小口金融については、厳格な取締をする一方で合理的な資金供与機関を助成する必要があるので、国は種々の金融機関をみずから設立し、もしくは地方公共団体に設立せしめ、またはその設立を助成しています。
資金需要者の資金を容易にするための物的担保制度として民法の規定する質権、抵当権の制度は、融資を円滑に、また合理的にするためには欠点なしとせず、これを補うぺく判例でみとめられたいわゆる譲渡担保制度、売渡担保制度もかならずしも充分ではありません。ここにおいて、鉄道抵当法、工場抵当法、鉱業抵当法、軌道ノ抵当ニ関スル法律、漁業財団抵当法、道路交通事業抵当法、等によるところの財団抵当制度が設けられて、大企業に対する融資が容易にされ、また担保付社債信託法は、信託制度をとり入れて担保付社債の発行及び運用について規定した法律ですが、これは会社企業に対する融資を容易にするものであり、財団抵当制度とは密接な関連をもっているのです。
以上のほか、農業金融に関連しては、抵当証券法が抵当権を証券化することによって融資を容易にする方法について規定し、また農業動産信用法により農業用動産を担保化して中小農業への融資の途が開かれています。

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