子供が生まれたら明け渡すという約束

「子どもが生まれたら明け渡す」という特約は、アパートの賃貸借でにみられるようです。赤ん坊は昼夜の別なく大声で泣きますので、仕切り壁もそう厚くはない木造のアパートなどでは、他の借主から苦情が出るかもしれませんし、また、大きくなるにつれて、いろいろいたずらして部屋を汚したり傷つけたりすることも考えられます。ですから、アパートを貸す際に、借主にこのような特約を押しつける貸主の気持も、わからないではありません。しかし、独身者だけに貸しているのならともかく、夫婦に貸した場合には、そのうち子どもができるのは自然のなりゆきであり、子どもが生まれたらその分だけアパートが痛むことも、やむをえないと考えられますから、これを禁止するような特約は、大げさにいえば、借主の基本的人権を損う疑いがあります。
貸主の側からしますと、いやなら始めから借りなければよいのに、子どもが生まれたら出ると約束したではないかとか、金を出せばほかに移れるのだから、べつに非難されるいわれはない、と反論したいかもしれません。それもそうですが、借りるときは借主の立場が弱いことは否定できず、しぶしぶ特約に応じたのであって、ほんとうに自由な意思でそんな特約を結んだとは考えられず、この場合「契約は守られればならない」という言葉は、そのまま通用しません。また、金さえ出せばというのも、そのとおりですが、そんな金があればなにも好んで「子どもができれば出ていってもらう」と言うような貸主から借りたりはしなかったでしょう。その程度の甲斐性もないのなら子どもを産むななどというのは、言語道断の議論であることは言うまでもありません。したがって、特約違反を理由に明渡しを要求した貸主は、これからもいろいろ嫌がらせをするかもしれませんが、法律的には、貸主の請求に応じる必要はありません。ここでひきあいに出されている特約は、「貸主は正当な理由がなければ解約の申入れをすることができない」という規定に反する借主に不利益な約定として、借家法六条により無効とみられるからです。かりにアパートの賃貸借には借家法の適用がないという立場をとっても、結果的に「子どもを産むな」ということを強制するような特約は、良俗に反するものとして、民法九〇条により無効ということができましょう。

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ここで問題とされた特約のほかに、例えば、決められた門限に遅れたり、いかがわしい女性を引き入れたりするなど、「他人に迷惑をかけ、もしくは風紀を乱したときは、明け渡す」という特約も、しばしばみられます。この特約は、内容がはなはだ抽象的ですから、法的な拘束力があるかどうか問題ですし、それだけに、自由であるべき他人の私生活に干渉する疑いがありますので、法律的には意味がないとみるべきでしょう。ただ、アパートの生活秩序を乱し、信用を傷つけるようなきわめて非常識な行動かおるときには、この特約がなくても、家主は借主に明け渡すよう請求することができます。
ところで、この種の特約がすべて無効であるかといいますと、必ずしもそうとはいえないようです。たとえば、独身女子アパートで、「結婚すれば出る」という特約があったときには、現在の社会意識からして、これを有効とみるべきでしょう。

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