クビになった集金人に支払ったら

集金人がクビになったのを知らないで、金を払ったときは、原則として、この支払いは有効になります。そうでないと、これまで支障なく支払ってきた集金人に対して、いちいち、あなたはクビになっていませんね、などと非常識な質問をしたうえで払わなければならず、ときには、本当に集金する権限があるのかということまで調べなければ、安心できない結果になるからです。ですから、支払った人がクビの事実を知らず、知らないことについて過失がない場合には、支払いは有効とされ、クビの事実を知らないことについて過失があったときにのみ、例外的に支払いが無効とされています。具体的には、どんな場合が過失ありということになるのでしょうか。
雇主が集金人をクビにしたという事実を新聞に広告し、その新聞をあなたが購読されていたのに、たまたまその広告を見なかったとか、雇主からクビにした旨の通知が電話なり郵便で行なわれたのに、あなたがそれを忘れていたり、郵便を見なかったという事情があるときは、普通の人ならば当然その集金人がクビになったのを知ることができたのに、あなたがそれを知らなかったのは不注意である。過失があるということになるでしょう。したがって、動作やその他の事情から、あやしいと思って当然、と認められる場合に、うかうかして払ってしまったときにも、その支払いは無効となりましょう。

スポンサーリンク

お金を借りる!

ところで、この問題は、ほんとうは受け取る権利がないのに、権利があるような外観の認められるときに、これを信じて支払った者を保護して、本来は無効となるべき支払いを有効とみようとする法原則の、ひとつの具体例といえます。ですから、このほかにさらに似たような例があります。それを挙げておきましょう。まず、使 用人が雇主の留守中に印鑑と預金通帳を盗み、銀行から預金を下ろした場合のように(もちろん、銀行は盗難の事実を知ることができなかった場合です)、債権者らしい外観をもった者に対してなされた支払いは、有効とされます。次に、我々が領収書を持ってきた酒屋の小僧さんに安心して支払っていることから推論されますように、受取証書の持参人に、受け取る権限がないのを知らずに支払ったときは、その支払いも有効とみなされます。ですから、いままでの集金人と違う集金人がやってき て、前の人が病気だから今回は自分が代わりにきたのだ、というので支払ったところ、後でそれが集金詐欺だとわかったような場合でも、領収書が本当のものであれば、支払いは有効になります。
しかし、この例のような場合には、領収書も偽造または変造であるのが普通でしょう。そうすると、受取証書が、それを作成する権限のある者によってつくられた真正の受取証書ではない、ということになって、支払った人は民法四八〇条による保護をうけられないことになります。では、受取証書が偽物なら絶対に支払いは無効かといえば、必ずしもそうとはいえません。例えば、保険料を取り立てにくる巣金人が、クビになったのちも保険会社の領収書用紙と印を盗用して受取証書を作成した、支払人がそれを知らずに、過失なしに支払った場合などは、支払いは有効になります。さらに、受取証書そのものは真正のもので なくても、例えば、他人の株式についてまず改印届をしておき、その印で利益配当領収書を偽造して、取扱銀行から配当金の支払いをうけた場合のように、いろいろな事情から、証書の持参人が支払いをうける資格、権限があるものと認められるときは、民法四八〇条によって、支払いは有効となります。
要するに、いままで通りの集金人に払っていれば、かりにその巣金人がクビになっていたとしても、支払いが無効になってもういちど払わなければならない、ということはまずありませんが、いままでと違う集金人がきたときは、前述のことを念頭において、十分注意することが必要です。十分な安全策を講じるためには、雇主に問い合わせなければならないでしょう。

お金を借りる!

試用期間中に解雇された/ 仕事中に負傷したときの補償/ 倒産の場合の未払賃金や退職金/ 結婚したら退職するという誓約書の効力/ 配転、転勤は拒否できるか/ デモで逮捕されたら解雇されるか/ 労働者はいつでも退職できるか/ 機械を賃借している場合の故障中の使用料は/ クビになった集金人に支払ったら/ 中古車を売買するときの注意点/ 見本と違う商品を送られたときの処理/ 店舗拡張のため銀行から融資を受けたい/ 恩給を担保にすることができるか/ 子供が生まれたら明け渡すという約束/ 一方的に賃料の値上げを請求された/ 家主が変わり明渡しを請求された/ 借地権の譲渡と借家の転貸し/ 建物の増改築の申入と地主、家主の承諾/ 契約更新の申入れと地主、家主の拒絶/ 造作買取請求権と引渡し拒否/ 内縁の妻は亡夫の借家権を引き継ぐか/ 土地建物を売買するときに必要な調査と準備/ 売買契約書に捺印する際の注意点/ 代理人と取引する場合に注意すること/ 売主の登記移転義務と買主の代金支払義務/ 建売住宅の雨漏り修理費/ 積立を完了したが、建築に着手してくれない/ 購入した土地が登記面積よりも少ない/ 違反建築物を買ったとき/