労働者はいつでも退職できるか

退職という言葉には二つの意味があります。その一つは、解雇を含めて労働関係が終了するすべての場合を指し、その二は、使用者の一方的な意思による労働契約の終了を意味する解雇とは逆に、労働者の一方的意思にもとづいて契約を終了させることを示します。しかし、普通、退職といえば、後者を意味するとみてよいでしょう。この意味での退職については、解雇の場合と違って、労働法による種々の規制ないし制約はなく、もっぱら民法の雇用に関する規定にしたがうことになります。ところで、いつでも退職できるかといいますと、大きくわけて、契約に期間の定めがあるかどうかによって違ってきますので、それぞれの場合について考えてみましょう。
日本では、労働(雇用)契約に期間の定めがないのが普通ですが、この場合、労働者はいつでも、また、特別の理由がなくても、解約の申入れをすることができます。ただ、次の点に注意する必要があります。日給、または期間をもって報酬を定めないときは、解約申入れ後二週間(猶予期間または予告期間といいます)をすぎてから契約は終了します。六ヵ月未満の期間をもって報酬を定めたときには、解約申入れは次の期以後についてだけすることができ、しかもその申入れは、その期の前半にしなければなりません。ですから、具体的にいいますと、月給や週給の場合には、その月の一五日またはその週の第三日までの間に申し入れて、翌月または翌週のはじめから契約を終了させることができます。もし、その月の一六日またはその週の第四日以後に申し入れたときは、翌月または翌週の中途で契約は終了し、その間の給料は日割計算になる、と考えるべきでしょう。六ヵ月以上の期間をもって報酬を定めた場合には、申入れ後三ヵ月経ったときから契約は終了します。

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民法の規定は、使用者の解約申入れ(解雇)の場合にも適用されるものであって(もっとも、労働基準法によっていろいろ制限されていますが)、そもそも、この解約申入れ後の期間は、この使用者の解約申入れ(解雇)の場合に労働者の生活の安定をはかるため規定されたものですから、労働者の方から解約を申し入れる場合には、必ずしもこの期間には拘束されません。したがって、労働者は使用者との合意によって、この期間を短縮することができます。しかし、労働者の解約申入れの場合に、この期間を延長することは労働者を不利にしますから、労働協約や就業規則でその延長を定めても、効力を生じません。
なお、念のため申し添えますと、退職の効力発生を、就業規則などによって、使用者の承認にかからせることは、予告期間の延長と同じように、効力を有しません。退職するためには、使用者(会社)の承認はいらないわけです。
契約に期間の定めがあるときは、労働基準法一四条により、その期間は一年以内に限定され、一定の事業の完了に必要な場合にかぎって、例外が認められます。そして、この期間中は原則として労働(雇用)契約を解除できませんが、例外的に「やむをえない事由」がある場合には、労働者は即時に(猶予期間なしに)解除することができます。やむをえない事由というのは、使用者側に存する事情として、仕事の継続により労働者の生命、身体に対する危険が予側される場合や、賃金の支払拒否や遅延などが考えられ、労働者側の事情として、負傷、疾病などによるかなりの期間にわたる就労不能、近親者の看護の必要性や家庭事情の激変などがあげられます。これらの場合には、労働者は期間中でも退職できることになりましょう。
なお、契約に期間の定めがあり、かつ、ここに述べたやむをえない事由がない場合でも、労働者の退職申入れに対して、使用者が同意すれば、期間中でも労働契約を終了させることができるのは、もちろんです。

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