デモで逮捕されたら解雇されるか

今日の企業においては、就業規則などで、一定の場合に使用者が労働者を懲戒できる旨定めているのが、普通です。懲戒には、たんに精神的なものにすぎない戒告やけん責から、転職、昇進の延期、出勤停止などの職業的な制裁、はては解雇にいたるまで、さまざまのものがありますが、いずれにしても、このような懲戒権は秩序罰を加えることにある、とみられます。つまり、使用者が経営の秩序を維持するために、秩序に違反した労働者に対して、不利益な措置をとることが、必要とされるわけです。
ところで、使用者に懲戒権を認めることに異論はありませんが、その懲戒権がたんらの制約もうけないとは、とうてい考えられますまい。組合の役員だから、キリスト教徒だからなどという理由で解雇できないことは、いまさらいうまでもありませんが、そこまでいかなくても、とくに懲戒解雇は、労働者を企業から追放する極刑ですから、その当否を慎重に判断することが必要です。
それでは、どういう行為が懲戒解雇にあたるのでしょうか。懲戒は、企業の秩序を維持して生産性を向上させるために許されるのであり、また、労働者は奴隷ではなく、その全人格、全生活領域にわたって、使用者の統制に服するものではありません。したがって、労働者の企業外における私生活上の言動は、企業秩序とは関係ありませんから、原則として、懲戒の対象にならないと考えられます。

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企業外での労働者の言動でも、それが企業の秘密や、名誉、信用などの保持に関連したり、その他社会的に重大な犯罪行為になるときは、懲戒の理由となりましょう。本問における「デモで逮捕された」場合についていえば、デモそのものは憲法二一条に保障された表現の自由の行使であり、たとえそのデモが違法とされ逮捕された場合でも、企業外で行なわれたときは原則として懲戒の対象にはならず、ただ、デモ行為が重大な反社会性をもつ場合に、懲戒事由となりうるにすぎません。具体的に裁判例によって考えてみましょう。
(1) デモ行進禁止区域に侵入し、占領軍命令違反として軍事裁判により重労働六ヵ月、罰金五万円の刑を言い渡された行為が、懲戒解雇事由にあたるとした例、
(2) 「砂川基地測量反対集会」の際、集会、行進にとどまらないで立入禁止区域に侵入し、警察官の制止を実力をもって排除した行為につき、有罪が確定した場合に、懲戒解雇事由にあたらないとした例、
(3) ハガチー秘書来日阻止の大衆行動が、暴行、脅迫をともない、懲役一年〜一年ニカ月の有罪判決をうけた行為について、懲戒解雇事由にならないとした例、などがあります。(2)(3)は社会的に注目された事例であったため、マスコミのとり上げるところとなりましたが、いずれも懲戒解雇を否定している点を重視すべきでしょう。ところで、以上の例はすべて、たんに逮捕されただけでなく、起訴または有罪確定後の判断を示すものですが、本間でも同じように考えてよいでしょう。
しかし、本問では、「逮捕された」だけなのですから、かりにこの「逮捕」が懲戒理由になるとしても、つねに解雇されるとはかぎりません。つまり、使用者の懲戒権行使は、その程度、方法につき客観的に妥当と認められるものでなければなりませんから、懲戒解雇は、労働者を企業から排除してもやむをえないと考えられるなどの事情があるときにかぎって、有効というべきでしょう。なお、念のため申し添えますと、逮捕されたのち正当な手続で、労働者が被疑者または被告人として相当長期間勾留され、そのため正常な企業経営をいちじるしく阻害するような場合には、それにもとづく解雇が正当とされることがあります。しかし、これは、正確にいえば、逮捕を理由とする懲戒解雇ではありません。
労働協約や就業規則に懲戒規程がおかれている場合には、その懲戒規程は使用者の懲戒権行使を制限するもの、と考えられます。ですから、逮捕されても有罪が確定するまでは懲戒解雇しない旨の労働協約一就業規則の定めがあれば、それはもちろん有効です。

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