結婚したら退職するという誓約書の効力

女子労働者が結婚した場合に、辞職するとか解雇するとか定めている会社(事業場)は、こうした結婚退職制を無効とする裁判例が出たため次第に減少する傾向にありますが、それでもまだかなり残っています。労働協約や就業規則によって退職を決めているケースもあれば、労働契約、本問の誓約書を入れた、というのはこれにあたります。そして慣例によって、退職を余儀なくされる場合もあります。いずれにしても、このような制度が完全に有効であるとは考えられません。そこで、もう少し立ち入って検討してみましょう。なお、職場結婚をした場合に、夫婦のどちらかが退職しなければならない、という定めも、本問の変型として、同じように考えてよい、と思われます。
まず、会社と労働者の間でなんらのとりきめのないとき、を考えます。女子職員が結婚したので会社が解雇したとしますと、この解雇は次のような理由で無効とされます。まず第一に、女子結婚退職(制)は、法の下の平等を保障する憲法一四条、労働条件について差別待遇を禁止する労働基準法三条、男女同一賃金を定める開法四条の精神に反し、民法九〇条にいう公序良俗違反の措置であり、さらに、それは、憲法二四条の保障する結婚の自由(配偶者の選択および結婚の時期についての自由)を制約する点でも無効であると。したがって、女子の結婚を理由とする解雇だけでなく、休職処分や依願退職処分も無効であり、地方公務員が職場結婚した場合にどちらか一方がやめなければならないというのも、地方公務員法一三条の不公平な取扱いの禁止に反するとして、無効とされています。
それなら、本問のように労働者が誓約書(または念書)を提出していたり、結婚退職が事実上慣行化していたり、その他労働協約や就業規則に結婚を理由とする退職を規定している場合は、どうなるのでしょうか。この場合は、それを承知で労働者が採用してもらったのだから、退職してあたりまえと考えられそうですが、そうではありません。さきに述べた「女子の結婚を理由とする解雇は無効」という結論をみちびき出す根拠になった法律の条文は、いずれも当事者個人の意思で変更できない性質のものですから、労働協約、就業規則などでこのように定めていても、その定めは法律的に効力をもたないといえます。ただ例外的に、例えば、特定の宗教団体における聖職者や巫女のように、その職種自体、配偶者がいては不適当な場合は、結婚すればやめなければなりますまい。ですから、本問の場合には、誓約書を書いて差し出しても、結婚とともに退職する必要もなく、また、会社の方から退職させることもできません。

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もし本問で、誓約書を出したのだからということで、退職願(届)を提出してしまったらどうなるのでしょうか。判例では、次の二つの場合には、退職が無効であるという主張を認めています。す なわち、会社がある女子職員を結婚したから解雇しようと考えており、この女性からの退職願の提出が会社の意図と密接に関連しているような場合、例えば、解雇のときよりも合意解約、退職願の提出と受理の場合のほうが、退職金その他の手当が多いので、やむをえず退職願を出したような例には、合意解約も公序良俗に反する、とされ、また、誓約書が効力をもたないと知っていたら退職願を出さなかったであろうと思われる場合には、法律行為の要素に錯誤があるとして民法九五条により無効とされているのです。
例外的に、結婚を理由とする解雇が有効とされる場合も考えられます。一般に、解雇は合理的理由のないかぎり無効とされていますが、遂にいえば、合理的理由があれば会社は一方的に解雇できるわけです。結婚を理由に解雇するときには、注意力、根気、正確さが欠け、家庭本位となり労働能率が低下した」というように主張されることが多いようですが、もし、会社の主張がそのとおりであれば、これを理由とする解雇には合理的理由があることになるでしょう。なお、労働能率が下がったというようなことは、会社のほうで個別的に証明しなければなりません。

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