代位弁済の制限特約

私は、同業者のAがB信用金庫から融資を受ける際に、連帯保証人になりましたが、署名捺印をして差し入れた契約書には、「保証人は貴金庫の都合によって担保もしくは他の保証を変更、解除されても異議はありません。」「保証人が保証債務を履行した場合、代位によって貴金庫から取得した権利は、本人と貴金庫との取引継続中は、貴金庫の同意を得なければ、これを行使いたしません。もし貴金庫の請求があれぱ、その権利または順位を貴金庫に無償で譲渡いたします。」という文言があります。これはなんの条項なのでしょうか。
これは三つの部分から成っています。まず第一は、B信用金庫(債権者)が誰かから徴求していた抵当を解除したり他の保証人を解放しても、あなたに異議はないという文言です。これは、民法五○四条に規定されている債権者の担保保存義務を免れさせる特約条項です。
第二は、あなた(保証人)が債務者Aの代わりに弁済したことによって債権者B金庫から得た権利については、AB間の取引が継続するあいだはBの同意がないかぎり行使しない、という文言です。保証人その他、弁済を為すに付き正当の利益を有する者は、弁済に因りて当然債権者に代位し、その結果として債権者がもっていた担保権、債権者取消権などを行使できますが、この文言は、取引継続中に限られますが、とにかくこの権利行使に対して債権者B金庫の同意という枠をはめるものです。条項乙と仮称しておきます。
第三は、保証人が代位弁済によって得た権利またはその順位を、債権者B金庫の請求によって無償で譲渡させる、という文言です。条項丙としておきましょう。一部代位の場合には、代位者と債権者が共同で権利を行使することになっていますが、この特約条項によって債権者は有利な地位を得られるわけです。特に取引継続中ならばBは条項乙であなたの要求を拒否できるため、この条項丙は取引終了後において効用を発揮しましす。

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銀行関係者たちは、このような特約が設けられたことにつき、以下のように説明しています。
まず、条項甲は、銀行収引では状況に応じて担保の差換とか変更をする必要があり、保証人を入れ替える必要も出てきますが、そのつど別にいる保証人の同意を得ることは難しいからだ、といわれます。
次に、条項乙および丙に関しては、例えば、100万円の抵当権つき債権のうちで40万円を保証人が弁済すれば、債権者B金庫に劣後することなく、40万円につき単独で抵当権を実行できることになりますが、これでは銀行が不測の損害を受ける。また、この場合において、物件が例えば50万円で売れたときには、債権者である金融機関はあなたからの40万円と配当金30万円しか入らないのに、保証人には20万円が戻ることとなり、これを回収にあてたいならば、あらためてあなたの配当請求権を差し押えなければならないが、これは保証というものの性質からいって不合理です。
ここで心配されでいるのは、銀行側からみた場合における不測の損害であり不合理な結果であることは、あらためでいうまでもありません。別の保証人の同意をそのつど得るのは困難だというのも何様です。ところで、銀行は自分が保証人になるときは、その地位につき十分な配慮を払っています。それは銀行が支払承諾つまり取引先の負う債務を保証してやる場合のことですが、事前求償権と預金とを相殺する旨の特約をつけ、代位権保全の手続もちゃんととっているのです。
保証人は、債務者の代わりに返済してやったときは、債務者に対して求償権つまり償還を求める権利があります。この権利は単なる債権ですから、もし債務者に償還するだけの資力がなければ、結局は払い損ないし払わされ損ということになります。ところが、保証人には法定代位が認められていて、いわば裸の求償権を、債権者がもっていた担保権で武装できるわけです。
これらの利益を放棄ないし遠慮させられる保証人は、もちろんその地位がよくなるはずがありません。特に本問の場合は、すべてを放棄しゆずらされるのですから、保証人にとってはマイナスばかりです。

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