手形債務の代位弁済

AとB銀行との手形割引契約について物上保証人になっていました。C振出の手形を、AはB銀行で割り引いてもらい、B銀行に裏書譲渡しましたが、この手形が不渡になりました。そこで、私が手形金額を弁済しB銀行から手形の引渡しを受けました。私は現在の手形の所持人として、Cに対して手形金の請求ができるでしょうか。
物上保証人は他人の債務を確保するために、自己の財産の上に質権または抵当権を設定するなどし、物的担保を提供するものですから、自ら債務者に代わって債務を弁済する当然の義務はありません。しかし、(1)弁済をなすことが、直接自己の利害に結びつくときはもとより、(2)そのような利害関係はなくても、債務者の意思に反しないかぎり他人の債務を弁済することができます。そして、弁済者の債務者に対する求償権の効力を確保するために、(1)の場合には、弁済によって当然債権者がその債務についてもっている担保権その他の権利が求償権の範囲において弁済者に移転し、(2)の場合にも、債権者の承諾を条件として同様の効果を生じるといえます。もっとも後者の場合に債務者に対し代位を主張するためには、そのものに対する通知または承諾が要求されます。

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手形金の支払いをするにあたって、誰のためにしたのか、本問からははっきりしませんが、割引依頼人が銀行から手形の割引を受ける場合には、割引を受けた手形が不渡となったときは裏書人として遡求義務を負うほかに、手形の買戻義務を負う旨が特約されるのが普通ですから、次の二つの場合が考えられます。その一は、割引依頼人Aのために遡求義務または買戻義務の履行として弁済する場合、その二は、手形債務者である振出人CのためにB銀行の承諾を得て債務を弁済する場合です。前者の場合には、Aが銀行から手形割引、貸付を受けることによって負担すべき債務について物上保証をなす者ですから、割引手形が不渡となったときには弁済をなすについて正当の利益をもっておりますから、弁済をなせば当然B銀行に代仕し、B銀行がAに対持っている手形上の権利を行使できます。しかし、このことから、振出人Cに対し手形上の権利を行使できるかどうかは、手形の引渡しが裏書譲渡やその他債権譲渡の方式によったかどうかと関連して問題となります。また後者の場合には、物上保証人であるからといって、Cの手形債務の弁済について当然、正当の利益を有する者とはいえませんから、任意代位とみることができ、弁済が債務者Cの意思に反していないことが要求されます。しかし、この意思は必ずしもあらかじめ表示される心要はありませんし、また弁済者にも、債権者にもしられていなくてもよく、弁済の当時それが一般取引の実情から客観的に判断できればよいわけです。したがって、特にその事情を証明しなくても、振出人Cに対してB銀行のもっでいる権利を主張できます。ただ債務者Cが弁済のその意息に反することを主張立証したときには代世の法律効果は生じません。
以上のように本問の場合、理論的にみて、物上保証人が割引依頼人の割引人に対する債務について弁済したか、手形の主たる債務者のために弁済したかによって、代位の要件と効果とに相違が認められます。学説上両者を区別することなく、手形の特質から代位弁済およぴ手形の交付によって手形上の権利は移転し、その権利行使のために裏書や指名債権議渡など特別の行為を必要としない見解があります。そしてこの見解では、手形の場合にはB銀行のAに対する手形上の権利について代位ということは考えられず、物上保証人が代仕弁済によりB銀行から手形を取得したときは、その時に保証人はAに対してばかりでなく、それ以外の手形債務者に対しても請求できるという意味での手形上の権利そのものを取得すると解しています。買戻義務を履行した場合にも、実質的には遡求義務を履行したのと同じですから、物上保証人の地位は割引位頼人のそれと変わりはなく、振出人に対し償還請求できると解するのが妥当と思われます。しかし、判例には両者の関係にふれたものはありませんが、一応区別して考えているようです。

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