第三者弁済と弁済者代位

AはBからお金を借りるに際し、唯一のしかも借金額を相当上回る財産を担保に入れ、それについて代物弁済の予約をしました。私はAに担保なしでお金を貸していたのですが、AがBに借金を返さないと、代物弁済によってAの財産がゼロになるおそれがあります。どうすればAに貸したお金を取り返すことができるでしょうか。
AがBに借金を返さなければ、AB間の代物弁済予約によってAは担保に入れた財産をBにとられてしまい、Aはあなたに対する借金を返せないようになるおそれがあります。そこで、AがBに対する借金を返せばよいわけですが、A自身が返さなくとも、あなたがAに代わってAの債務を弁済することができるかどうががまず問題です。債権者としては貸したお金を返してもらえばよいわけで、実際に返す人が債務者か債務者以外の第三者かは重要な問題ではないと考えられます。したがって第三者も、債務者の代理人というような資格においてではなく、債務者から独自に債務者の債務を弁済することができるとされています。ただ、民法四七四条が定めているょうに、債務者自身が弁済しなければ意味がなくなるような債務とか、当事者がとくに反対の約束をしているような場合には第三者の弁済は許されず、またこのような場合でなくとも、弁済をすることについて第三者自身が利害関係をもたないときには、債務者の意思に反しては弁済することができないとされています。
利害関係がある者とは、たとえば、債務者のために自分の財産を担保に入れた者や、担保に入った不動産を買い取った者など法律上の利害関係をもった者のことであり、ただ債務者の親族といったような事実上の利害関係をもった者は含まれないと解されています。そして、利害関係をできるだけ広く解しょうとする傾向があり、本問の場合のように、債務者を同じくする一債権者が他の債権者に弁済する場合にも、利害関係があるとされています。したがって、あなたはAに代わってAのBに対する債務を弁済し、担保に入っているAの財産を担保から自由にすることができるわけです。

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第三者弁済をすると、AはBに対する債務を免れ利益を得ることになりますが、その利益はあなたの負担、損失によるものです。したがって、あなたは今度はAに対して自己の損失を補うために求償することができるようになります。民法はあなたの求償権の効力を確保するために、債権者であったBがその債権についてもっていた担保権その他の権利が、この求償権の範囲において、あなたに移転することを定めています。このように弁済をした第三者に、弁済をうけた債権者の権利が移転することを弁済者の代位といっています。
しかし民法は、この代位について任意代位と法定代位という二つの場合を区別しています。民法五○○条は、弁済について正当な利益をもった第三者は弁済によって当然に代位する(法定代位)とし、そうでない第三者は債権者が代位について承諾することを必要としています(任意代位)。これは、第三者弁済が許されるかどうかの基準として利害関係の有無が問題とされるのと同様、代位についても正当な利益を有しない第三者による代位を債権者の意思によって阻止しようとするものです。ところで正当な利益とは何か、特に利害関係とどう違うかが問題となります。利害関係と同様、正当な利益も広く認めようとする傾向があり、両者はほぼ同一内容のものとする見解もありますが、一般には利害関係の方が正当な利益より広いと解されています。正当な利益を有する者として、判例に出ている例をあげると、弁済によって当然法律上の利益をうける者、例えば連帯債務者、保証人、物上保証人また債務者の財産が他の債権者の執行によって価値を失う場合の一般債権者などです。したがって、本問の場合、正当な利益を有する第三者として弁済によって法定代位が認められます。
弁済者の代位が認められる場合、債権者に代位する弁済者は、その求償権の範囲で債権の効力及ぴ担保としてその債権者が有せし一切の権利を行うことができます。この一切の権利とは、弁済をうけた債権者の債務者に対する履行請求権、損害賠償請求権、また債権者が物を担保にとっていたならば担保物権(物的損保)、保証人がたてられていたならば保証人に対する保証債権(人的担保)などのすべてを含むと解されているので、結局、債権者が債務者に対してもっていた権利およぴそれに付随した権利のすべてが弁済者に移転することになります。したがって、本問の場合、AとBとの間の代物弁済予約の権利もまた代位の目的となると老えられます。もっとも、代物弁済予約は債務者が債務を弁済しないとき、目的物をそのまま債権者に引き渡すことによって債務を決済するという内容の特約であると解し、このような強い権利がそっくり弁済者に移転すると考えるのは不当であるという考え方もないではありませんが、今日では次のような理由でこの考え方は正しくないと解される傾向にあります。つまり、代物弁済予約は目的物の所有権を債権者に移転し債務を決済するという点に主な目的があるのではなく抵当権などと同様に債権担保という機能を営むと考えるべきで、予約上の権利も、民法五○一条一号の先取特権、不動産質権、抵当権と同視すべきであるということです。

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