供託

私に金を貸していたAが国税を滞納しましたため、国はAの私に対する貸金債権を差し押えました。ところが、その後Aの債権者Bがこの貸金債権を二重に差し押えてきました。私はAに対する債務の金額を供託すれば、債務から逃れられるでしょうか。
このような場合については、先になされた国税差押えが優先するので、国に支払えばよいことになります。
たとえば、債権者と債務者との間で債権額について争っている場合に、債務者が自分の正しいと思っている金額を持参して弁済しようとしても、債権者の方では、それを受け取ったのでは相手方のいい分を認めたことになるのをおそれて受け取ろうとはしないはずです。この場合、債務者としては、一応弁済の提供はしているわけですから、彼の主張が正しければ、債権者の方が受領遅滞となり、債務者は不履行の責任は負わなくてもよいことになります。しかし、債務は消えていませんから、支払いの準備はしておかなければならず、保証人の責任や抵当権などの担保権も存続することになります。このように、債権者の側の事情で弁済ができないときに、その弁済の目的物を供託所に寄託すれば弁済をしたのと同じように債務が消滅することにして、債務者を救済する制度が供託(弁済供託)という制度です。

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債務者が供託できるためには、いいかえれば、供託所が供託の申請を受理してくれて債務消滅の効果を生じるためには、まず、民放四九四条が定めている供託原因が存しなければなりません。供託原因には次の三つがあります。
(1)債権者が弁済の受領を拒んだ場合(受領拒絶)
判例は、この場合、債権者がはじめから受領を拒んでいても、債務者としでは、一応口頭の提供をして債権者を受領遅滞に陥らせなければ供託ができないのが原則ですが、債権者の受領拒絶の意思がきわめて強く、提供をしてみても無駄だということがはっきりしているときは、提供をせずにすぐに供託ができる、としています。学者の大多数は、債権者の受領遅滞はいらないので、すぐに供託できると考えています。ただし、はじめから受け取らないといっているのでないかぎり、一度債務者の方から提供をしなければ、債権者が受額を拒んだとはいえないことはいうまでもありません。
(2)債権者が弁済を受領できない場合(受領不能)
例えば、債権者の方から債務者のもとに受け取りにくる約束のある場合(取立債務)に、地震などで交通機関が動かず取りにこれないとか、債務者が弁済しようとして電話をかけたが債権者が留守で留守番の人はなにもわからないと答えたとか、債権者が未成年者なのに親権者も後見人もいないとか、いうような場合です。
債務者の過失によらないで債権者を確知できない場合(債権者の不確知)
債権春がいることは確かなのだが、それが誰であるがわからない場合です。債権者が死亡して相続人が誰かわからないとき、譲渡禁止の特約のある債権が譲渡されたり差し押えられたりしたとき、債権の差押えと支払禁止の仮処分とが競合したときなどがおもな場合です。本問の重複差押えの場合もこれに当たりますが、この場合は、民事析訟法六二一条一項によっても供託できると考えられています。
供託できる者は原則として債務者ですが、民法四九四条は弁済者という言葉を使っていますので、債務者に代わって弁済をすることのできる第三者も供託することができると考えられています。
供託をするには、供託規則が定めている供託書に所定の事柄を書き込み、そのほかに必要とされる書類をそえて供託所に申請するのですが、細かいことは供託所かその近くに店を出している司法書士に相談しましょう。
供託所は、供託する物が金銭または有価証券の場合は、法務局、地方法務局またはその支局、法務大臣が指定した出張所になっていますが、弁済供託の場合は、債務履行地の供託所に供託しなければなりません。債務履行地の基準は、市町村または都の特別区だと考えられていますから、契約や債権の性質などによって定まる弁済の場所の属する市町村または特別区に供託析があるがどうかを調べる必要があります。もしなければ、もよりの供託所へ供託すればよいとされており、この「もより」というのは、必ずしも地理的な意味にかぎらず、交通の便などを考えあわせて定まると考えられています。このような基準で定まる供託所以外の供託所にした供託は、債権者が受諾または受領しないかぎり無効になりますから注意が必要です。
なお、民法四九五条は、供託したときは直ちに債権者に通知すぺきことを定めていますが、弁済供託の場合には、供託のときに、供託通知書と債権者の宛名を書き切手をはった封筒とを供託所に提出し、供託所から発送してくれることになっていますから、別に通知する必要はありません。

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