予約完結と目的物の帰属と清算

100万円の借金の担保として、土地を抵当に入れましたが、貸主は、ついでに代物弁済予約の仮登記もつけてもらいたいといって、その手続をさせました。期限にどうしても返せなかったところ、貸主から、あの土地は代物弁済でもらうので本登記手続の承諾書に印をつくよう申し入れてきました。こういう場合、貸主が土地を自分のものにすることは許さるのでしょうか。また、その土地は更地で、時価300万円くらいするのですが、元利金との差額は返してもらえるのでしょうか。
従来は、代わりの物を渡すことによって決済してしまうのが代物弁済であり、代物弁済予約はその事前合意にほかならないと考えられてきましたから、差額を返すなどは問題外でした。しかし新判例ではご元利額と目的物の価格とが合理的均衡を失する場合には、債権者のほうで目的物件を売却して、換価金額と元利金額との差額を債務者に返さなければならない、という建てまえを宣言しました。この立場は、それ以後もいくつかの判例によって支持されており、もはや動揺しないと考えられますので、債権者も債務者も、丸取りできる場合が著しく減った点に十分注意しておかなければなりません。

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問題は、清算の要否をわかつ合理的均衡が具体的にいってどういう内容なのか、ということです。判例の事案は、共有者の一人が提供した物件であって、ごく安くしか売れないのみならず簡単に買い手がつくかどうか自体すでに疑問ですが、そういう事情を割り引いても6倍弱に達しています。3倍から4倍以上になると暴利行為にさえなるくらいですから、この事案がバランスを失しているのはもちろんです。しかし、元利合計額を少しでも超えたらアンバランスになるかは、この判決ではわかりません。2倍から3倍の場合にはよもや合理的均衡ありとはされず、若干の微増しか計すべきではない、少しでも較差があれば清算させるべきであるという意見があり、下級審にも2倍の根代物弁済予約につき合理的均衡を失するとした例がみられます。
なお、差額清算をしないという特約がついていても、いわゆる合理的均衝を失するときには、有効だとは認められないと思われます。
この判例は特別の事情がないかぎり、という留保つきでバランスを失する場合の処分、清算を命じています。清算のほうは前に説明した枠を守らなければなりませんが、処分は絶対的でなく、債権者が目的物の所有権を確定的に取得する旨の特約も有効です。各種の担保取引約定書などでは、こういう帰属清算型の条項がかなり一般に用いられています。例えば債権者の選択により、物件の処分に代えて、適当な評価額で代物弁済としてもらい受ける、といった約束などがそうです。
ただ、この型の場合には、評価の適正性がとくに重要な問題となります。ご承知のように不動産の客観的な評価は因難で、鑑定を頼んだときにも依頼者がだれかによって多少ズレるものですが、債権者やその意を受けた人が評価する場合には、どうしても安くみつもる可能性が大きいからです。
例えば時価の七分の一に評値すれぱ評価権の濫用となるのはもちろんですが、得手勝手な自主評価と感じられたら、遠慮なく異議を申し入れ、それでもきかないときは評価が不適正だと裁判所へもちだしてよいでしょう。
もっとも、どの程度のズレなら適正として許容されるかは徴妙な問題です。例えば、時価2000万円の不動産を債権者が一方的に750万円と評価した事案において、先順位担保権者の債権1000万円を控除すると、著しい隔絶はないとした例があります。差額がなお250万円ある点に注意してください。また、いわゆる適正評価額とは、予約完結時に債権の保全、回収の立場から経済人として社会通念上許される方法や程度で評価すれば足るという意味だとしたうえで、信託銀行の鑑定を参考にしてではありましたが、物件の価格を確定債権額とまったく同額に評価したのが適正と判断されている例もみられます。
剰余金に対しては、債務者や提供者だけでなく次順位の担保権者も期待をもっていますから、なるべく早く行なわせるような手段が考えられなければなりません。強制方法のひとつはもしこれらを怠っていれば受け戻せる、ということですが相当な期間を定めた処分ないし評価したがって差額返還の請求も認めるべきです。また、帰属清算型の場合には、いつまでも評価清算をしなければ、換価処分の請求ができると解釈したらどうでしょうか。
次に、いわゆる合理的均衡を失するがどうか、したがってまた清算しなければならないかどうかを決める際、債権額や目的物価格はいつを基準として算定するのでしょうか。特に継続的な取引における代物弁済予約すなわち根代物弁済予約では、締結から実行までのあいだに相当な時間的間隔があって、不動産の値上りも十分予想されます。とすれば、基準時点のとり方いかんで後順位担保権者や債務者は影響を受けるわけで、軽くみることはできません。最高裁は、目的物の価格については契約締結時、元利金額のほうは弁済期を基準時点とみていますが、下級審には、両者とも所有権取得時とするらしき事例、物件価格については予約完結時を考慮している事例があります。

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