弁済の充当

Aに対して、抵当権のついた甲貸金債権と保証人のある乙貸金債権をもっていますが、どちらの債権も弁済期がきています。Aが甲乙両債権の合計額に満たない金額を支払ったとき、それはどちらの債権の弁済にあてられるでしょうか。
債務者が同一の債権者に対し、同種の目的をもった数個の債務を負担する場合、または、一個の債務の弁済として数個の給付をなすべき場合において、債務者が弁済したものがその債務の全部を消滅させるには不足しているとき、それがいずれの債務、または、いずれの給付の弁済として取り扱われるべきかを決定することが必要となります。この決定を弁済の充当といっております。本問の場合、Aに対する甲乙両債権はどちらも金銭債権であり、しかもAが支払った金額が甲乙両債権の総額に満たないのですから、弁済の充当の問題となります。民法は充当の方法として、弁済者または弁済受領者の一方的意思表示によって充当が決定される指定充当と、民法の規定による法定充当とを定めていますが、これ以外に当事者の合意によって自由に充当を定めることができます。

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本問では、Aと合意して甲乙両債権のどちらにでも自由に充当することができます。このような合意がない場合には、まず弁済者であるAが弁済するときに充当の仕方を指定することができ、Aが指定をしないときは弁済受領者が受領の時において指定することができます。しかし、指定する場合には、Aはただちに異議を述べることができ、異議がある場合には充当の効力は生じません。この場合、弁済者があらためて充当指定をすることができるか、あるいは民法四八九条の法定充当によるべきかが問題ですが、今日では一般に法定充当によるべきだと解されています。
最後に法定充当が問題となりますが、法定充当とは、本問で甲乙両債務の弁済期の差異や債務者にとっての利益の大小などを基準に充当の仕方を決定するものです。それによると、甲乙両債務はともに弁済期がきているために、民法四八九条二号によって早乙債務のどちらに充当した方が債務者にとって利益となるかが基準となります。債務者にとって利益とは、判例によりますと、無利息債務より利息付債務、低利率の債務より高利率の債務、連帯債務より単純債務の方が、原則として債務者にとって利益が多いということになります。
ところで、本問の場合は甲債権は抵当権つきであり、乙債権には保証人がついています。保証人からすれば乙債権に充当された方が利益になると考えられますが、弁済をした債務者Aにとっては抵当権のついた甲債権の方が利益が多いといえます。というのは、もし甲債権が弁済されねば抵当権が実行されて抵当物を失う恐れがありますが、乙債権を弁済しなくとも保証人が不利益をうけるだげだからです。したがって、Aが弁済したものは甲債権に法定充当されることとなります。
甲乙両債権またはそのいずれがについて元本以外に費用、利息を支払わねばならぬ場合には、それらの弁済期が到来しているか否かにかかわらず、まず費用、次に利息という順序で元本より先に充当しなけれぱなりません。そして、甲乙両債権とも費用、利息がついている場合には、どちらの費用、利息に先に充当すべきがが問題となりますが、この先後については民法四八九条の規定が基準となります。この規定は、当事者が充当について合意した場合を除き、指定充当および民法四八九条による法定充当の場合に適用されます。
ところで、この利息については利息制限法によって利率が制限されています。そしてその一条では、制限を超過した利率の約束は「その超過部分につき無効とし、その反面、債務者が超過利息を任意に支払ったときは、その返還を請求することができないと定めています。そこで債務者が制限超過利息を任意に支払った場合に、その返還請求はできないとしても、超過分を元本に充当することができないかどうがが問題となります。この点について、最高裁判所は先に大法廷判決として、当事者の合意による充当の場合はもちろん、債務者が利息である旨指示して支払ったとき、債権者が超過利息に充当したのに対し債務者がこれを承認したときなどは超過利息に充当され、ただ債務者の積極的意思によらず、法定充当の現定による場合には超過利息に充当できないと解しましたが、後には同じ大法廷判決をもって、任意に支払われた超過利息を元本債権へ充当することを認めています。学説も多くは後の見解を支持していますので、それに従って考えてよいでしょう。

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