弁済の提供

借主に貸金の返済を請求したら、半額は現金で、半額は小切手で支払うということでした。全額現金で支払うよう要求できないものなのでしょうか。
一口に債権、債務といっても、例えば騒音を出さないという債務のように、債権者のなんらの協力なしに債務者だけで行なうことができるものもありますが、多くの場合には多かれ少なかれ債権者の協力が必要です。本問の場合のように、借金を返すという債務でも、債権者が受け取ってくれなければ債務が完全に果たされたとはいえません。したがって、債務が完了するためには、債務者の側でなすべきことと、それに応じて債権者の側でなすべきこととを区別して考えることができます。そして債務者がなすべきことをしたに事かかわらず、債権者の協力がないために債務が完了しない場合には、債務者を批難すべきでなく債権者の方が批難されるのが当然です。弁済の提供というのは、このような場合に、債務者がなすべきことをするということを意味し、弁済の提供をした債務者は提供したときより債務不履行の責任を負わず、逆に債権者の方が不利な取扱いをうけることになっています。

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債務者のなすべきことといっても、本問の場合のように、普通の借金の返済というような債務では、債務者が実際に借金額を持って債権者に届けるということが必要ですが、債権者があらかじめ受け取ることを拒んでいる場合などでは、実際に金銭を持っていっても受け取ってくれないでしょうし、そこで金銭の準備をして受け取るように請求することでょいと定められています。そして、実際に金銭をもっていくような弁済提供の方法を現実の提供といい、準備して債権者に請求し債権者の協力を待つという内容の弁済提供の方法を口頭の提供といっています。どちらも、弁済の提供としで同じ効力が認められています。
借金の返済というような金銭の支払いを内容とする債務は、特約がなければ債権者の現時の住所で弁済しなければなりません。債務者はとくに債権者の協力なしに債務の主要な部分を完了することができるので、債権者が受取を拒否しているとか、支払場所や時期を債権者が前もって指定するようになっている場合を除けば、ぽとんど現実の提供が問題となります。
現実の提供は債務の本旨に従いてなさなければらないため、債務の全額を提供しなければ提供があったとはいえませんが、不足分が僅少であれば、信義則によって有効な提供があったと解されます。また、約束の期日に持っていったが債権者が不在であった場合も提供は有効と解されますが、債務者が債権者の不在を知っている場合には、あらかじめ通知をするとか、あらためて別の日に持っていくとかいうことが必要であると考えられます。その他、弁済の期日、場所などについて不明確な点があるときには、それをはっきりさせるために債務者の方で連絡をとらねばならないなど、弁済の提供については債権者、債務者双方が種々連絡しなければならない場合が多いということに注意が必要です。
本問で借主は借金の半額は小切手で受け取ってもらいたいというのですが、小切手による弁済の提供は有効かどうがが問題です。現金を手渡す代わりに、郵便為替や小切手を使用することが少なくありませんが、判例によりますと、郵便為替の送付、振替貯金払出証書または振替貯金の払込みによる弁済は現実の提供となります。これに反し、債務者が預金通帳を渡すという場合は、通帳を債権者が受領しないかぎり有効な提供とならず、債権者が受領して現実に支払いをうけたときに有効な弁済となると解されています。本問の場合は小切手ですが、小切手は一般に郵便為替ほどの確実性がありません。したがって普通の小切手であれば、特約または慣習がないかぎり有効な提供とはならないと解されています。しかし、信用のある銀行が振出し、裏書また保証した小切手は取引上金銭と同一視されていますので、これは現実の提供となると解すぺきです。最高裁判所の判例も、最近従来の見解を改め、銀行の自己宛振出小切手の送付は原則として有効な提供となるといっています。

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