督促(債務履行の催告)

債権回収のてだての第一歩として、債権者が債務者に対して債務を履行(弁済)するよう請求するのが、世間一般や取引社会でいう督促、催促なのですが、これは、民法上の用語でいえば、債務履行の催告(裁判外の請求のことです)。そして、その法的性質は、相手方(債務者)に対する一方的な意思通知なのだと解されています。それは、この催告に対しては、法律の規定によって直接に一定の法律効果が与えられ、催告者がこうした法律効果を生じることを知り、または欲していたかどうかに関係なく、所定の効果を生じるのです。催告の本来の目的は、債権をできるだけ早く、簡単に、確実に、そしてなるべくなら円満に回収するための始動的、反覆的手段なのです。こうした目的を達成するには、どのように督促するのが上策なのでしょうか。それには法律が督促(債務履行の催告)にどのような法律効果を付与しているのか、ということを知っておくことが必要です。それから、催告の本来の目的は、相手方である債務者の任意弁済を促すことにあるわけですから、裁判所の手を通さない請求(裁判外の請求)としてまず行なうのが通常であり常道なのですが、まれにはいきなり、あるいは裁判外で催告をくり返した後に、履行請求の訴訟を起こすとか、裁判所に支払命令を申し立てるといった、裁判上の手続をふんだ場合でも、催告の効果は生じます。

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どんなつもりで催告し、どんな意味でそれを受けとったかということには関係なく、催告をすると、法律上当然に、次のような種々の効果を生じます。
債務者が履行の催告を受領したのに、なんの返事もせず放っておくと、債務不履行の一態様である履行遅滞の責任が生じ、履行が遅れたことによる損害の賠償義務の原因や契約を解除される原因となります。
履行(弁済)の期限が定められていない債務の場合ですと、債権者はいつでも催告でき、催告のあった時から遅滞を生じます。といっても、それも債務の種類によりけりで、借金のような消費貸借上の債務ですと、返済時期を約定していない場合でも、いま催告していますぐ返せとはいえず、貸主は催告はいつでもできるのですが、それには相当の期間を定めて返還の催告をしなければなりません。したがって、借主は、その期間内に返済しない場合にはじめて遅滞の責めを負うことになるのです。また、自動車事故を起こした場合のような不法行為による損害賠償債務は、期限の定めのない債務なのですが、判例、通説は、催告がなくても、不法行為の時から当然に履行遅滞になるものと解しています。
○月○日に支払うとか、○月○日から○力月後に支払うというように、確定期限の定めがある債務の場合は、その期限がきた時から遅滞におちいることになりますが、債権者の方から出向いて取りに行かなければならないという取立債務のように、履行について債権者側の協力が必要な債務ですと、その確定期限に債権者が必要な行為をしなければ遅滞にはならず、債務者としては、履行の準備をしてその旨を通知していつでも受けとれと逆に催告すれば落度はないのです。また、手形債務のような証券的債務ですと、確定期限が定められていても、証券を呈示して催告しなければ遅滞にはなりません。
債務者がすでに履行遅滞におちいっている債権について、「○月○日までにお支払いくだざい」といった趣旨の督促をする場合に、注意すべきことは、弁済期限を予告したわけでも、その間の遅延利息を免除したわけでもないのに、不誠実で好智にたけた債務者ですと、この通知を逆手にとって、そうした主張をしないとも限りません。ですから督促の文句には、決してそういう意味の通知でないことを明確にさせておく必要があります。
貸金債権の問題ではありませんが、相手方の経済状態が悪く代金債権回収の見込みがあやしくなったが、売却した商品はまだ相手方の手元に残っているとか、土地を売却したが代金を払ってくれないままで最近地値が急騰したとか、代金を支払ったのに商品を一向に納入してくれないが最近値下がりの気配があるというような場合は、契約を解除するのが得策です。債務者の責めに帰すべき履行遅滞を理由として解除権を行使するについては、まず相当の期間を定めて履行の催告をしなければなりません。この催告期間内になお履行がなされない場合に、解除をすることができます。この催告は、付遅滞の催告とその性質は同じで履行の請求なのですから、両者を重視させる必要はありません。
督促の仕方には、別段制限がありません。したがって、督促したという事実の証明さえつけば、電話、口頭、文書その他どんな方法で行なっても、催告としての法律的効果には差異はありません。実際上の効果をあげるための督促の緩急、硬軟については、そのケースで異なり一概には言えませんが、最後通牒として行なうとか、時効の中断や契約の解除を目的に行なう場合には、後日のための証拠として残しておくという点においても、内容証明、配達証明郵便の文書にすることです。

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