転得者に対する請求

AがBから譲り受けた家を買い登記名義も移してもらいましたが、先日Bの債権者だというCがやってきて、BA間の売買は実はBが自分たち債権者に返済する資力がなくなって財産を隠すためにやった仮装売買であり、登記名義を戻してもらいたいといってきました。私はこの家を買うにつきDから借財しており、抵当をつけています。この場合はどうなるのでしょうか。
債権者取消権は、債権を保全するためのものですが、一方、それを行使すると、その結果取引の安全が害されることにもなりますので、そのような取消権の行使が許される場合をかぎって、一定の要件を備えた事実状態が生じている場合でなければならないとしています。その要件の一つは、債務者が債務超過に陥ることですが、他の一つは、ここで問題にする債務者に行為当時、許容できない一定の意識状態があることです。後者の要件の意味については、債務者が、自分のなす行為が債権者を害するということを知っていれば、それで足りるとする見解や、それ以上に詐害の結果を欲する意思がなければならないとする見解がありますが、そのほかに、信義誠実義務に違反する意図や不当な意図のあることを必要とする見解もあります。諸見解のうち、認識説によるのではなく、意思説やその他の説にしたがえぱ、詐害行為の認められる範囲もおのずから狭くなります。ところで、債権者が、債務者の行為によって利益をうける相手方、すなわち受益者を、また、受益者から目的物の全部または一部を譲り受ける者、すなわち転得者を被害にして、許害行為の取消しを求めうるには、受益者は、行為当時、債務者の悪意を、また転得者は、受益者の悪意を知っていなければならぬとしていますが、その点、判例は、受益者、転得者が、行為が債権者を害するという事実を知っていればよいとしています。もっとも受益者、転得者に過失があっても、善意であれば取り消すことはできません。

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裁判で、債務者が悪意であるかどうか判明しない場合、取消しを求める債権者側で、債務者の資産状態、処分行為の対価などから、その悪意を挙証することになっており、それができないと善意が推定され、取消しは認められなくなります。しかしながら、法規の表現形式をみますと、受益者、転得者の主観対要件は、民法四二四条一項の但書の部分に定められてありますから、挙証責任の分配用によりますと、受益者、転得者がみずからその善意を挙証しなければなりません。
判例はそのような立場にたっていますが、学説には、ことを具体的に処理しようとして、挙証責任を画一的に負わせることに反対するむきもあります。
まず受益者、転得者ともに悪意の場合で、詐害行為の目的物が受益者の手許にとどまらず、転得者にまで譲渡されたという場合には、詐害行為取消権を形成権と解すると、債権者は、債務者、受益者、転得者すぺての者を共同被告としたうえ、許害行為を取り消し、債権者代位権を行使して目的物の返還を求めなければなりません。
しかし、取消権を請求権と解すると、受益者に対しては損害賠償を、転得者に対しては目的物の返還を請求することができます。前者の立場が形成権説、後者の立場が請求権説といわれていますが、そのほかに折衷説という立場があり、そこでは許害行為を取り消し、かつ目的物の返還を求めることになります。そして、この説でも、取消しと返還とを同格にみる場合は、形成権説と同じ扱いになり、取消しを返還の手段とみる場合は、請求権説と同じ扱いになります。
判例は、明治四四年の大審院連合部判決以来、従前の立場を改め、折衷説の第二説にたっているようです。したがって、この立場により、本問をみると、受益者Aも転得者も悪意である場合には、取消債権者Cは、Aを相手どり、損害賠償を求めることができますし、また転得者を相手どり、所有権移転登記の抹消を求めることもできます。なお、その場合、抵当権者Dがやはり悪意である場合には、CはDも相手方として抵当権設定の取消しを請求できます。しかし、Dが善意で、Cが譲渡の効力を消滅させるだけで取消しの目的を達しうる場合には、Cは、抵当権を存在せしめたままで、転得者に対してだけ所有権移転登記の抹消を請求することができます。
つぎに、受益者が悪意で転得者が善意である場合には、Cは、受益者Aを相手どり損害賠償を請求できるにすぎません。そして、受益者が善意で、転得者が悪意の場合には、Cは、転得者であるあなたに所有権移転登記の抹消請求ができるかが問題になりますが、取消しの効果は、債権者に対する関係で相対的に生じるという立場にたちますと、問題を肯定することになります。否定説では、悪意の転得者が善意の受益者に対し、追奪担保責任を問うようになることに拘泥するのですが、肯定読にたつとともに追奪担保責任は問いえないと解するのが望ましいと思われます。なお、この場合、抵当権者についての関係は、先に、受益者、転得者ともに悪意である場合のところで述べたことと同様に解されます。
取消債務者の行為が通謀虚偽表示に当たると、その行為は無効とされています。その結果、行為を許害行為として取り消すことができないようですが、無効は相対的なもので、通謀虚偽表示につき善意である転得者に対しては、有効と解すれば、転得者が虚偽表示につき善意でも、許害の事実につき悪意であるかぎり、債権者は、その転得者に対し、許害行為取消権を行使しうることになります。もし、本問で、BA間の行為が通謀虚偽表示になる場合には、同様に解すればよいのです。

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