連帯保証における債権者取消し

私が貸金債権を有するAは、他の債権者に対してもBCとともに連帯債務を負担しています。この場合、Aの消極財産に計上するのは連帯債務全額でしょうか。それともAの負担部分だけでしょうか、そして、AがDEとともに私に対し連帯債務を負っているとして、Aが負債超過であるのに財産を他へ処分したときは、DEの財産状態がどうであるかにかかわらず取り戻せるでしょうか。
詐害行為取消権が成立するためには、取り消そうとする処分行為によって債務者が無資力、債務者の消極財産(債務)の総額が彼の積極財産の総額をこえる状態に陥ったことを必要とします。Aの資力の算定に当たって、Aがあなた以外の債権者に対して負担している連帯債務をどのように計上すべきかについては、大体次のように考えられます。
連帯債務者は、債権者に対しては、債務の全額について請求を受ければこれを弁済しなければならない立場にありますが、全額を弁済した連帯債務者は他の連帯債務者に対してそれぞれの負担部分についての求償権をもち、そのすべてについての弁済を得たときは、彼は結局自分の負料部分についてだけ出捐した結果となります。したがって、Aの負担する連帯債務額は一応全額を消極財産に計上しますが、Aが、他の連帯債務者BCに対する求償権が確実であることを挙証すれば、その部分は消極財産から除きます。もし、BCのすべてが求償に応じうる資力をもっていることが挙証されれば、結局、Aの負担部分額だけを消極財産に計上すべきことになるわけです。このように考えるのが通説です。判例は、必ずしもはっきりしませんが、この場合と、次に説明する場合とを区別することなく、また、連帯債務者の一人が優良な担保を提供していることを考慮に入れることなく、つねに連帯債務全額を消極財産に計上する態度を示しているようです。

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この場合に、許害行為取消権を行使しようとするに当たって、Aの債務が連帯債務であることは、なんら考慮する必要はありません。つまり取消権の行使を妨げるものではない、と解するのが通説であり判例でもあります。連帯債務者は債権者に対して全額弁済の義務を負っており、連帯債務の全額について一般財産がひきあてになっていると考えられるからです。この場合、他の連帯債務者DEの財産状態が悪くて、Aが全額をあなたに弁済したうえで彼らにそれぞれの負担部分を求償してもこれに応じられないときに、このように考えるべきことは当然でしょうが、かりにDEの財産状態がよくて、求償に応じてAに弁済できるとしても、かかる求償権はやはり不確実なものであって、プラスとして計上すべきものではない、と考えられています。したがって、Aのした財産処分行為を取り消してその財産を取り戻すことができます。
保証債務は様々形で問題となります。
Aが負担している債務に保証人がついていることは、その債務があなた以外の債権者に対するものであると、あなた自身に対するものであるとを問わず、なんらの影響をももちません。いいかえれぱ、保証人の存在は、債務者の資産状態になんらのプラスをもたらすものでもなく、また、あなたの債権の保全の必要を減少せしめるものでもない、と考えられます。
A自身が保証人である場合、その資力の算定には、原則として保証債務は消極財産に計上されませんが、取消権を行使しようとする債権者が、主たる債務者に弁済の資力がないこと、いいかえれば、Aが保証債務を履行しなければならないことが確実であることを挙証すれば、その範囲内で消極財産に計上すべきだとされています。
次に、あなたが他の人に対してもっている債権の保証人たるAが、その財産を処分して無資力におちいることも詐害行為になり、あなたはこれを取り消せると考えられます。ただし、保証人がいわゆる検索の抗弁権を提出し、主たる債務者に十分な資力があって、債権者としては保証人に請求する必要がないことを挙証したときには、取消権は成立しないとされています。したがって、Aが、検索の抗弁権のない連帯保証人である場合には、Aが連帯債務者であるときと同視すべきである、といわれています。

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