債権の保全と管理

何々管理という言葉は、銀行関係を含む実務書ではひろく使われており、むしろ濫用気味だといってもよいほどです。債権管理や貸金管理と同様な意味で使われるものとしては、貸出管理、賃出債権管理、事後管理などがあります。また、債務者、担保提供者、担保物件の変動、増担保、抵当権の処分、消滅などをひっくるめて担保の管理ということもあり、さらに同様な用語法として保証の管理があります。
次に債権保全の方は、たしかに債権者代位権や債権者取消権が発動する際の要件として、債権保全の必要とか特定債権の保全という形で出てくる言葉です。しかし、ここで問題となっているのは、保全のためにとるべき処置、手続をさしており、しかもかなり多義的に用いられています。

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債権管理とは、金銭貸借に即して簡単にいえば、貸金債権の回取を安全確実にするための種々な処置、および法的手続をひっくるめた呼びかたであって、貸金管理や貸出管理も同義語です。もっと広義には、貸出の際の信用調査、契約書作成および担保設定などを含むものとして用いられる場合もありますが、これらを貸出の実行というグループのなかへ押しやるならば、債権管理は結局のところ事後管理ないし貸出後の債権管理に帰着します。むしろこの使い方が一般かもしれません。
債権管理は、いうまでもなく金銭貸借のみならず売掛取引などでも問題になります。また、債権管理の方法としては、のちに掲げるもののはか、保検や取立委任もあります。さらに、管理の内容のひとつとして、特に金銭債権の場合は、その評価に注意すべきです。次に債権保全は、この債権管理と同じ意味の場合もあり、債権回収と同義に用いられることもないではありませんが、代表的な実務書のひとつをみると、狭義には貸出先に倒産の懸念が生じ、または倒産した場合、銀行としては取引を打ち切って貸出金の回収を強行するもやむをえないという大方針を前提に、回収確保のために必要とされる各種の処置のことだとされています。これによると、債権管理は、いわば無事平穏に返済が行なわれる通常な場合の問題であり、債権保全は、取引先の信用状況が悪化した場合の問題である、といった使い分けもできます。
かかる管理、保全の具体的な手段ないし内容については、次に主な事項を掲げておきますが、債権回収や担保管理に属する事項との限界線は必ずしもはっきりしておらず、また、採りあげる事項とか排列のしかたも多少の相違がみられます。
法律問題ではない事項の調査や把握もありますが、法的管理としては、だいたい以下のような事項が入っています。

各種の再調査、再確認
すでに貸出しの実行前に、債務者や保証人の権限とが行為能力、契約書の内容、担保提供者の権限、意思などは十分調査、確認されており、登記その他必要な対抗要件もそなわっているわけですが、もう一度それらを調べます。例えば保証人は、保証契約の当事者としてその保証意思が絶対に必要ですから、いくら保証人欄に捺印があっても、直接誰が出むいてきてそうしたのでないか聞く意思の再確認をすべきだといわれています。

時効の中断
消滅時効が完成すると債権の回収を強制的にははかることができなくなるので、そういう事態を防ぐために必要とされる債権管理の手段です。中断の手続および効力のほか、いわゆる短期消滅時効にも注意しておかなければなりません。

債務者の変動
個人貸付では、債務者が死亡して相続開始となったとき、特に限定承認がなされたとき、また法人貸付では、代表者の変更があったとき、合併や第二会社の設立があったときなどにおいて、債権管理の問題を生じます。さらに、債務者の追加や変更も、このなかに入ります。

担保の変動
これは例の担保管理に含まれることもありますが、増担保とか担保の差替えのような担保物件の変動、物上保証人が死亡した場合のような当事者の変動、根抵当の機関延長とか極度額増加のような契約の変更、その他のことです。

狭義の債権保全
いよいよ取引先が危くなった場合の処置ですが、差引計算ないし相殺の準備としてなされる期限利益喪失の手続き、当座勘定の解約、遡求の通知が保全の手段として重要だといわれています。増担保や保証人の追加は、この段階でも保全方法として問題になります。また、仮差押えのような保全処分も、債権保全の重要な一策です。

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