民法での無能力者

民法では満20歳に満たない者、心神喪失の常況にあるもので禁治産の宣告を受けた者、心神耗弱者、浪費者で準禁治産の宣告を受けた者を無能力者としています。
民法所定の前記の無能力者は、いずれも意思能力がないか不十分な者で、一般人よりも弱い立場にある者であるために法律は、一律的にその者が単独でなした行為は取り消すことができるものとして、その者を保護する事にしたのです。これらの者の行為を具体的な場合にいちいち検討してみれば、意思能カの全くない場合もありますが、もしそうであれば意思能力のなかったことを立証してその行為は無効とすることができます。しかし具体的には意思能カのなかったことを証明することができない場合もあり、逆に完全に意思能力があった場合もあります。このような場合でも意思能力が不十分だったり瑕疵があることが一般的に予想されるので、それらの者を保護する必要があります。そこで民法では、これらの者を一律に無能力者として、その行為を取り消しうるものとしたのです。このように無能力者制度は意思能力を前提にし、意思能力のない者や不十分な者を一律に保護するために意味をもつ制度であり、ここに第一の目的があります。しかし無能力者を画一的に定めることによって行為能力の概念を明らかにし、取引の安全を意図する制度だということもできます。ここに無能力者制度の第二の目的があるといえます。一定の者を画一的に無能力者とすることは、これらの者と取引をする相手方を警戒させることになるので、本人を保護すると同時に、社会一般が意思能力の不完全な者と取引することによって被る法律上の面倒をある程度まで予防する作用を有するといえます。しかし、具体的な場合に無能力者かどうかを知ることは容易ではなく、いちいち無能力者かどうかを調査しなければならないということは、やはり取引の支障となることにはかわりはありません。したがって、無能力者制度は、社会一般人の擬制を強いる結果になっており、その主目的はやはり無能力者本人を保護するための制度だといわなければなりません。
無能力者制度は、無能力者保護という個人本位の法律思想に立脚するものですが、社会本位の立場からは批判されるに至っています。つまり大規模な企業や営業から生じる不法行為の責任は,加害者の意思にかかわらず賠償責任を負うべきだとする考え方や、広汎で迅速な社会経済取引においては、その取引の安全のために一個人の意思能カの有無はある程度まで無視されねばならないとする考え方や、団体中の一員に意思能力、行為能力を欠くものがあっても、団体意思に重点を置き、個人の無能力を理由としてその団体の社会的作用に影響を及ぽすべきではないとする考え方などがこれです。

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