仮差押への第三者異議

仮差押の執行につき第三者異議の訴えを提起して審理中、仮差押が本執行に移行した場合、原告はどうすればよいのでしょうか。この場合は仮差押の執行に対する第三者異議の訴えを強制執行に対する第三者異議の訴えに変更します。しかし、実務上は請求の趣旨の訂正として取り扱っている例もあります。第三者の物が債務者の所有物と誤認されて、仮差押をうけた場合、第三者は第三者異議の訴えを提起して仮差押の執行の排除を求めることができます。第三者異議の訴えは、仮差押の目的が自己の所有に属することを主張する場合がその典型的な事例です。この場合第三者は対抗要件を経たことを要することは当然です。有体動産に対する仮差押の場合、第三者たる直接占有者は、占有権にもとづき第三者異議の訴えを提起することもできます。

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第三者異議の訴えを提起する場合、第三者は仮差押命令の債権者を被告とすべきですが、仮差押命令の債務者も第三者の権利を争うときは、債務者を共同被告として第三者の権利の確認等を請求することができます。
第三者異議の訴えの管轄は執行裁判所の専属管轄であるため、原則として地方裁判所になります。簡易裁判所の発した仮差押命令の執行に対する第三者異議の訴えについては、当該簡易裁判所は民訴法七五○条二項、七五一条二項により執行裁判所となる場合のほかは管轄権を有しません。また高等裁判所の発した債権仮差押命令の執行に対する第三者異議の訴えは、執行地を管轄する地方裁判所に提起すべきです。
仮差押の執行後に債権者が本執行をすることができるようになったときは、仮差押執行は当然本執行に移行します。これを本執行への移行とよんでいます。債権者が本執行をすることができるようになるのは、確定判決、仮執行宣言付判決等債務名義を取得することが必要ですが、被保全権利と執行債権とに同一性を要することは当然です。
仮差押執行がいつ本執行に移行するかについては、学説、判例が分かれています。判例では、債務名義成立の時と解しているようです。学説には、このほか、執行力ある正本の債務者への送達時説、本執行申立時説、本執行開始時説がありますが、現在のところ本執行申立時説が最も有力です。仮差押執行と本執行の手続が重複する場合には、あらためて本執行のために同じ手続をやりなおす必要はなく、直ちに次の段階に進むことができます。例えば仮差押に係る有体動産について差押物を債務者、債権者または第三者の保管に任せているときは、執行官は直ちに競売手続に進むことができます。この場合執行官は、保管の現物に赴いて仮差押物を点検し、かつ、債務者に対し強制執行のための差押をした旨を告知します。債権仮差押については、直ちに移付命令を発することもできますが、実務上はあらためて差押命令を発しています。不動産、船舶の仮差押については、強制競売開始決定を必要とするので、はじめからやり直すこととなります。仮差押の執行が本執行に移行すると、仮差押執行の効力はその目的を達して消滅し、以後は本執行による効力のみが存続することとなります。
仮差押執行に対する第三者異議の訴え係属中に、その仮差押執行が本執行に移行すると、前述のように仮差押執行の効力は消滅するために、もはや仮差押執行に対する第三者異議の訴えを維持することは無意味となります。そこでこの訴えを本執行に対する第三者異議の訴えに変更できるかどうかが問題となります。大判大正五年九月一五日民録一三斡一七八六頁は、強制執行の要件が完備すれば仮差押は本執行として存統するとしつつ、仮差押を許さない旨の判決を求める申立てを強制執行を許さない旨の判決を求める申立てに訂正することは、旧民訴法の申述の更正に該当し、申立ての変更には属しないとされます。そこで、実務上は請求の趣旨の訂正として取り扱っている例もあるようです。しかしながら仮差押はこれを許さない旨の請求の趣旨を強制執行はこれを許さない旨の請求の趣旨に変更することは、訴えの変更にあたるというべきであり、訴えの変更は請求の基礎に変更なき場合として許すべきです。第三者異議の訴えは執行の開始された土地を管轄する執行裁判所に専属するため、仮差押裁判所と本執行裁判所とが異なれば、第三者異議訴訟の専属管轄が異なることも起こりうります。その場合には、前者の裁判所は訴えの変更を許したうえで、後者の裁判所にその訴訟を移送すぺきです。

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