第三者異議の訴えの提起

特定物の引渡しを命じる債務名義がある場合、当該物の所有権を主張する者は、強制執行の着手前に第三者異議の訴えを提起することができるでしょうか。この場合には、第三者異議の訴えを提起することができます。強制執行の目的となるべきものは、債務者の責任財産に属するものでなければなりません。ただ、特定物の引渡しの執行等にあっては、責任財産であるというのは、債務者が実体上の権利を有することを意味するのではなく、債務者が執行の目的物につき執行を妨げる実体上の権利を有しないことを意味します。第三者異議の訴えは、執行の目的につき第三者が所有権その他の譲渡または引渡しを妨げる権利が当該第三者に帰属する場合に、これを主張して執行の排除を求める訴えです。第三者異議の訴えは、具体的な特定の財産に対する執行の排除を目的とします。

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設問は、理論的にはまず第三者異議の訴えの法的性質をどのように解するかに関係します。第三者異議の訴えに関しては、次の四つの説が対立しています。
形成訴訟説では強制執行の目的財産について第三者が所有権その他の譲渡または引渡しを妨げる権利を有する場合に、当該第三者から執行債権者を相手として、その強制執行の目的物に対する現実の執行処分の排除を求めるもので、第三者の執行法上の異議権を訴訟物とする形成の訴えであるとします。立法の沿革等からみるとこの説の正当性を肯定することができ、ドイツ法における通説であるとともに従前は日本においても通説でした。日本での裁判例も、おおむねこの説によっているといわれています。この説では、実体的異議原因は訴訟物にならず、これについての既判力は生じません。さらに、形成訴訟であることは認めつつ、広く第三者が執行の目的物につき執行を排除することができる法的地位を訴訟物とし、理由中の判断に既判力を拡張したり、争点効理論を採用する説があります。
給付訴訟説では第三者が、債権者に対し、執行の目的財産についての不執行の不作為を求め、または目的財産の引渡しを求める給付の訴えとしています。
確認訴訟説では、さらに実体的異議原因を確認する訴えとする説と、対象となる執行処分の目的物に関する責任の不存在を確認する訴訟法上の確認訴訟とする説とに分かれます。
救済訴訟説では執行の目的物が執行の引当てになる財産でないことの確認を要素として、形式的には適法に行なわれてきた執行を排除するという形成的作用をともなう判決を求める訴えで、確認、給付、形成のいずれの訴えにも属さない特殊の類型に属する訴えであるとしています。
いずれの説をとっても、執行行為着手後に当該執行の目的物について所有権を主張する第三者が第三者異議の訴えを提起することができることは疑いがありません。問題は、執行行為着手前はどうかということです。特定物の引渡執行は、特定動産の引渡しにせよ、家屋明渡しまたは家屋収去土地明渡しにせよ、執行着手まで待って、第三者異議の訴えを提起し執行停止の申立てをするのでは、時機を失するおそれが多分にあります。しかも、執行の目的は特定しています。そこで、多くの学説は、債務名義に表示された請求権が特定物の引渡しに関するものである場合に、執行開始前にも、当該特定物につき引渡しの執行を妨げる権利を主張する第三者は第三者異議の訴えを提起することができることを認めています。ドイツの通説でもある日本の判例上も、これが認あられています。
執行着手前の第三者異議の訴えを肯定した場合には、形成訴訟説では、取消の対象となるべき現実の執行処分がないため、理論的には説明ができないはずであるという批判が、確認訴訟説あるいは救済訴訟説の立場からなされています。これについては、形成訴訟説を貫徹するとすれば、将来の強制執行開始を条件とする形成判決を求める訴えと解するべきであるといわれます。確認訴訟説または救済訴訟説の立場から、訴えの利益の問題に帰着することになり、理論的な難点はありません。
ただ、特定物の引渡執行については、その債務名義は執行債務者に対してのみ効力を持つものであり、その場合に当該物件が債務者の責任財産に属さないことが確定されることになれば、結局は当該債務名義の執行力は排除されてしまうことになります。第三者異議の訴えは、一般には具体的な執行処分の排除を求める訴えであるといわれますが、特定物の引渡しの場合には例外的な事態が生じます。理論的にはいずれの説によるにしても、結論としては特定物の引渡執行については、着手前に第三者異議の訴えを提起することを認めるべきです。この場合においても執行力のある正本のあること、つまり執行文の付与が要件となるかどうかについて説が分かれています。

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