強制執行当事者の適格

AはBに対して金銭債権を有しています。BがCに対して金銭積権の債務名儀を有している場合、Aは自ら執行文の付与をうけて、Cに対する強制執行を申し立てることができるでしょうか。これはAは、BがCに対して有する債務名義にもとづいて自ら執行文の付与をうけ、Cに対する強制執行をなすことはできません。ただし、執行行為の代位という考え方で、これをなしうると解する余地があります。判決手続において、誰が当事者となるべきであるのかという当事者適格の問題があるように、強制執行手続においても、誰が債権者として、どの債務者に対し執行手続をすすめるべきであるのかという執行当事者の適格の問題があります。強制執行手続は、特定の請求権の内容を債務名義にもとづいて強制的に実現する手続であるため、この執行当事者の適格は債務名義によって決定されます。つまり当該債務名義の執行力が自己のために存する者が執行適格者であり、自己に対して存する者が被執行適格者です。したがって、本問の場合、執行適格者はBになります。AがBのCに対する債権でもって自己のBに対する債権の満足を得ようとすれば、まずBに対する債務名義を取得し、これにもとづいてBのCに対する債権に対して強制執行しなければなりません。もっとも、債務名義の執行力は表示された当事者以外の者に対しても及ぶことがありこの場合には、これら執行力の及ぶ者もまた執行当事者の適格を有することとされています。これによれば、口頭弁論終結後の承継人、請求の目的物の所持人、訴訟担当の場合の被担当者、訴訟脱退者が執行当事者の適格を与えられているため、自分で債務名義を取得していなくとも、他人の取得した債務名義でもって強制執行をなしうることになります。本問に則していえば、AがBに対する債務名義を得てBのCに対する債権に対して執行をし、取立、転付命令を得れば、後にCが任意履行しない場合には、BのCに対する債務名義にもとづいて自ら執行文の付与をうけて執行でき、また、より簡単には、BからCに対する債権を譲り受けさえすれば、口頭弁論終結後の承継人として、BのCに対する債務名義にもとづいて自ら強制執行をなすことができることになります。しかし、このような自由が存しないかぎり、Aは、Bが取得した債務名義でもってみずから強制執行をなすことはできません。

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AはBの口頭弁論終結後の承継人等に該当する場合のほかは、Bの有する債務名義を基礎としてみずから強制執行をなすことはできません。しかし、すでにBがCに対して債務名義を有しているために、Aがこれを利用することができれば非常に便宜です。その手段として、さしあたって考えられるのは、債権者代位権です。判決手続においては、債権者は債権者代位権にもとづいて、自ら訴訟当事者として、債務者の権利を裁判上行使することが認められています。本問でいえば、要件さえ具備すれば、Aは原告となって、BがCに対して有する債権を訴求することが認められているのです。訴訟法的に表現すれば、Bの有する金銭債権についてAは原告適格を有するのです。そこで、この原告適格の承認に呼応して、Aに、すでにBが取得した債務名義について執行適格を認めることはできないことが問題になってきます。そしてもしこの問題が肯定的に解されれば、Aは、債権者代位の要件が具備することを要件として、Bの有する債務名義にもとづいて、自ら執行文の付与をうけて強制執行を申し立てることができることになります。もちろん、本問のような事例であれば、前述したように、AはBの債権を譲り受けさえすれば容易にBがCに対して有する債務名義を利用しうることになりますが、Bからその権利を譲り受けることができないような場合には執行行為の代位という考え方も大きな作用を営むことになります。

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