期限の利益喪失条項

貸付金の債務者は、返済期限について、期限の利益を有していますが、民法一三七条は一定の事実の発生によって、債務者は期限の利益を主張することを得す、としています。つまり債務者が破産の宣告を受けたとき、債務者が担保を毀滅し、またはこれを滅少したとき、債務者が担保を供する義務を負う場合に、これを供さないとき、以上の事実の一つが発生した場合には、債務者の信用ははなはだしく滅少することになるため、債権者になお期限到来まで償還の請求を猶予させることは酷であると考えられるためです。ただし、この民法の趣旨は、債務者は期限の利益を主張することはできないというにとどまっており、これらの事実の発生によって、債権者は期限の利益を喪失させるかどうかの決定権をもつことになりますんが、現実には期限の利益を喪失させる旨の意思表示があってはじめて、債務者は期限の利益を失うことになります。

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民法一三七条で規定する期限の利益喪失事由は要約すると、債務者の破産、担保毀損、不提供になります。しかし、債務者の信用力がはなはだしく失われる場合としては、このほかにも債務者が会社整理、会社更生の申立をしたとか、支払停止があったとか、あるいは割賦返済約定のある場合に割賦金の返済を怠っているなどの、様々な事由が有り得ます。
このような事実が発生した場合に、早急に債務者に債務の返済を請求し、担保、保証人の追及等債権回収の手段を講じていくうえでは、民法の一般原則だけでは不備が多いということになります。民法の一般原則だけでは、期限の利益喪失事由に不備があるだけでなく、それぞれ期限の利益を喪失させるための意思表示が必要なことから、機動的な処理が難しいことなどが考えられます。
期限の利益を喪失させるために、意思表示が債務者に到達することを要するという手続上の問題点は、現在では、ほとんど解消されていますが、過去においては、差押をめぐる預金との相殺間題として、期限の利益喪失条項の整備に様々な問題を投げかけました。
銀行にとって、第三者が自行預金を差し押えてきた場合に、自行の貸付金と相殺できずに差押債権者に預金をおさえられてしまうことは、債権回取上大問題となります。旧来の判例は自働債権と受働債権の双方がともに弁済期にあること、あるいは昭和39年12月23日最高裁判例でも、差押の当時、貸付金等の自働債権が弁済期になくとも受働債権の期限よりは先に期限が到来するものでなければ差押債権者に対して預金との相殺をもって対抗することはできないとしていました。
したがって、期限の利益喪失約款を整備することによって、預金に対し第三者から差押があった場合に、その時点で何らの意思表示を貸付先にすることなく自動的に貸付金の期限が到来するものとして、賃付金の弁済期を預金のそれよりも先に到来させることが、銀行にとって重要な関心事であったわけです。
一般に金融取引で使用されている期限の利益喪失条項は、債権者側の債権確保の見地から民法一三七条で定める喪失事由を実情に合うよう拡張することを目的として特約されており、さらにこの期限の利益喪失条項を受けて、割引手形の買戻しに関する特約、および預金との相殺、払戻に関する差引計算の特約が用意されています。
またこういった手形割引、預金取引のない金融機関の場合は、期限の利益を喪失させるときに請求という意思表示によってはじめて期限の利益を失うものとしているものが多くなっていますが、一般の銀行取引約定書では、喪失事由を区分して、一定の事実が発生した場合には何らの通知催告を要せず当然に期限の利益を喪失するという特約を設けています。

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