貸付金の返済期限

期限とは、法律行為の効力の発生、消滅または債務の履行を、将来到来することの確実な事実の発生にかかる付款です。金銭貸借における返済期限は、それが到来したときから債務の履行責任が発生します。そのときに借主は借金を返済すべきであり、これを怠ると遅延利息の発生をみることになります。消滅時効進行の起算点については、必ずしも返済期限と一致していないために注意を要します。
法律行為の効力を期限にかからせることによって、期限の到来までに当事者が受ける利益を期限の利益といいます。例えば債務に履行期限を付したときは、その期限到来までは債務者は弁済を猶予されるという利益を持っています。そして、民法一三六条一項では、期限は債務者の利益の為めに定めたるものと推定すと定めています。期限は、通常は債務者の利益のために定められることが多いからです。しかし、法律行為の種類等によっては、期限の利益は必ずしも債務者のためばかりに存するとは限りません。例えば、銀行定期預金の期限は、債務者たる銀行にとっても支払が猶予せられる利益を生じるとともに、債権者たる預金者にとっても約定の利息が支払われる利益が存します。そして、民法一三六条一項にかかる推定規定のある結果、期限が債権者の利益のために、または、前記の場合のように、債権者の利益のためにも存するものであるときは、債権者がその利益を主張しようとする場合には、自ら立証責任を負うことになります。

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期眼の利益は放棄することができますが、これによって相手方の利益を害してはなりません。したがって、前例によれば定期預金契約の債務者たる銀行は、その返還期までの利息を支払うなど、債権者たる預金者の返還期未到来により受くべき利益の喪失を補填する場合には、その返還期につき自己の有する利益を放棄することが許されます。
確定期限の定めのある場合、あらかじめ、一年間とか、何月何日までとか、というように、貸借について確定的に期限の定めがある場合には、その返済は、期間の末日または期限の到来した日になさなくてはなりません。
期間については、民法一三八条以下一四三条までに規定があります。ここでは、同一四一条につき、債務の履行またはその請求に関し、法令または慣習によって取引時間の定めがある場合には、その取引時間にかぎり、債務の履行をなしまたは、その履行の請求ができる旨の規定があること、および、同一四二条に関し、一月三日も休日に入るという判例が出ています。
確定期限には、貸付金の一部について、次々と期限が到来するものがあります。例えば金200万円を借り、毎月末日かぎり金10万円宛を支払う、というような場合であって、これを割賦弁済といいます。割賦払約款を作成するに際しては、期限の利益喪失条項を付することが通常行なわれます。例えば借主が一回でも弁済を怠ったときは期限の利益を失い、全額を一時に支払うことなどとされる類です。この場合に、借主が前記の条項に該当する支払の遅滞をなしたときに、直ちに当然に期限の利益を失うのか、貸主から改めて催告があってはじめて期限の利益を失うのか、という間題が生じます。消滅時効の起算点に関し、判例では割賦払の債務につき債務者が一回たりともその弁済を怠ったときは、債務者は、割賦払による期限の利益を失い一時に全額を支払うべき旨を特約した場合といえども、その特約の趣旨が、一回の怠りにより当然期限の利益を喪失することなく、これがためには債権者において全額につき一時の支払を求め期限の利益を喪失せしめる皆の意思表示を為すことを必要とするものであるときは、債権全額に対する消滅時効は、その意思表示の時より進行を開始すると述べて、請求喪失型を原則としましたが、銀行取引約定書五条のように、当然喪失約款と請求喪失約款とに分けて規定している場合に、当然喪失約款についてこの判決が妥当するかは必ずしも明かではありません。
将来発生することは確実ですが、ただそれが何時発生するか不明である事実の発生によって弁済期が到来するという場合を不確定期限付といいます。これに関して、いわゆる出世払証文が、弁済につき不確定期限を定めたものか条件を付したものかがかつて争われ、若干の判例が存しますが、総じて不確定期限を定めたものと解されています。
金銭貸借において、当事者が返済時期を全く約定しない場合があります。このような場合には、弁済期は金銭貸借成立と同時に到来し、貸主は何時でもその返還を請求できます。民法四一二条三項では、債務の履行に付き期限を定めさりしときは債務者は履行の請求を受けたる時より遅滞の責に任ず、と規定しているからです。契約書中に、請求を受けたときは一か月以内に御支払しますとか、返還の請求をなす際は10日の猶予期間をおいてなすこと、というような定めがある場合も、期限の定めのない貸借です。
このように、期限の定めのない場合には、貸主は何時でも返還の催告ができるのですが、その際には、貸主は相当の期間を定めてなさなければなりません。
この催告が返還請求のための必須の条件であるかどうかについては、判例では、金銭貸借について、貸主が相当の期間を定めて返還の請求をなすことは、返還請求権の行使につき、貸主の遵守することを要する絶対必要案件にあらずして、借主に属する一の抗弁方法たるに過ぎずとしており、借主がこの抗弁を主張しないかぎり、裁判所は催告の有無を調査する必要はなく、貸主の請求のときから借主は遅帯に陥入ることとなります。

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