利息の利率約定

貸付利息は諸要因によって決定され、市場の状況によって自由に動くのが本来のあり方です。しかし、貸付利息がつねに自由に放任されるとなると、当事者間の力関係によっては、本来落ち着くべき水準より高く決定されるおそれもあり、また銀行などの金融機関においては、過当競争の結果、貸付利息が高くなりすぎたり、あるいは低くなりすぎたりして、その経営を危うくするような事態が発生することにもなりかねません。そのために市中金融機関の金利の大部分は、昭和22年に制定された臨時金利調整法によって制限されています。法律が制定されるまでは、金融機関相互間において、預金利子協定、貸出利子協定などが結ばれ、この協定にしたがって規制が行なわれてきたのですが、昭和22年に私的独占の禁止および公正取引の確保に関する法律が施行され、金利協定がこの独禁法に違反するのではないかという疑問が生じたために、協定は廃止されるに至りました。

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臨時金利調整法が同年に制定され、協定に代わって同法によって規制されることとなり、同法に基づく大蔵省告示によって、貸出利息と預金利息の最高限度が定められていたのですが、貸出利息については、昭和33月6月以来、臨時金利調整法の告示の限度内で、公定歩合の変動に応じ銀行間の協定により、貸付金全利の最高限度を動かすという自主規制金利の割度がとられるようになり、さらに昭和34年2月アメリカのプライムレート制にならって、自主規制金利の中で基準となる金利を定め、これを標準金利とし、これを標準として実際の貸出利息を定めるという方式がとられるようになりました。
一方で預金金利については、昭和45年3月臨時金利調整法に基づく金融機関の金利の最高限度を定めた告示を改正し、大幅に簡素化されたのに伴い、日本銀行が預金種類ごとに利率のガイドラインを示し、金融機関はそれに従って付利するという方式がとられています。
銀行は手形貸付および証書貸付については、約定利率に基づいて貸付利息を徴求しますが、その計算の方法は手形貸付においては、貸付実行日から返済期日までの両方の端を入れた日数について日歩計算をします。これを両端入れとよんでいます。
これに対して、預金利息を計算する場合は、預入日から払戻の前日までの期間について日歩計算をします。このように片一方の端だけを計算に入れるのを片端入れ、あるいは片落ちとよんでいます。このように貸付利息と預金利息とで計算方法が異なるのは次のような理由によります。手形貸付の法律的性質は消費貸借であり、その利息は元本使用の対価として、元本を受領した日から発生し、返済は返済期日の金融機関の営業終了時刻までに返済すれば足ります。借主は貸付を受けた日から返済期日まで、使用することが可能です。これに対して、預金の法律的性質は消費寄託であり、寄託者のため目的物を保管することを目的とする契約です。そのために支払を求められた場合は、直ちに支払することができるように支払日の前日からその資金を準備しておかなければなりません。このように貸付と預金では、その法律的性質も経済的効果も異なるために、利息の計算方法に差具が生じますが、このことについては十分に合理性があるものと解されています。
手形貸付利息の具体的な計算は、例えば100万円を6月1日に賃付け、2ヶ月ごとに書替を行なうとすれば、最初の手形は振出日6月1日、満期日7月31日となり、
100万円×61/365×約定利率(年利)
として計算し、利息は先取りとなります。
そして二枚目の手形は、振出日7月31日、満期日9月30日となります。この場合も、
100万円×61/365×約定利率(年利)
として計算します。
100万円×61/365×約定利率(年利)
従来手形書替の場合、手形書替日の利息についても、新手形について発生した利息として徴求していたため、二重に利息を徴求する扱いとなっていました。これを一般に、おどり利息とよんでいます。おどり利息は明治以前からの慣行でしたが、利息の完全な二重取りで合理的でないために、全国銀行協会連合会は、昭和48年9月18日、同年10月以降廃止することを決定し、現在ではこの慣行は行なわれていません。なお、廃止されるのは、手形貸付の書替の場合、新手形にかかわる書替日の利息と手形貸付の回収と賃付が同時に行なわれ、実質的に書替えと考えられる場合のそ の日の利息ですが、実質的な書替えに該当するか否かの判断は、資金使途が同一であるか、貸出科目が同一であるか、回収と貸出が同日付で行なわれるか、新手形金額が旧手形金額を超えないかによって判断され、基準をいずれも満たす場合は実質的な書替えに該当することになります。証書貸付にかかるおどり利息については、決定に基づく全銀協通達ではふれていませんが、手形貸付の場合と同様に取り扱うべきであることはいうまでもありません。
証書貸付については、日歩、月利、年利の三種類があり、利息の支払方法も先払、後払、分割払の態様があります。本来手形を併用しない証書貸付などにおいては、利息後払が原則でしたが、現在においては、手形をとる実質的な理由が薄れたことと、事務合理化の見地から証書貸付を利用する場合が増えており、手形貸付におけると全く同様の利息の計算方法がとられる場合があり、両端入日数計算が行なわれることもあります。
銀行取引約定書ひな型三条一項では、利息、割引料、保証料、手数料、これらの戻しについての割合および支払の時期、方法の約定は、金融情勢の変化その他相当の事由がある場合には、一般に行なわれる程度のものに変更されることに同意致しますと定め、利息等の割合等について、銀行が一方的な変更権を有することを定めています。
このような約定が定められているのは、利息等の割合等の変更について、多数の取引先の承認をとるのは実際上困難であり、また変更を承認する取引先と承認しない取引が生じた場合は、大量取引の円滑な処埋が困難となるため、あらかじめ、銀行に一方的な変更権を与えていることにしているのです。この変更権の法律的性質については、貸付先は変更に同意する義務を負うにすぎず、貸付先の同意またはそれに代わる裁判があってはじめて、変更の効力が生じるものであるために、銀行の一方的な意思表示により変更をなしうるものではないとする見解もありますが、このような変更権は一般的に形成権として構成するのが適切であるために、銀行から取引先に対する一方的な意思表示により変更の効果が生じるものと解すべきです。
このような銀行だけが著しく有利な立場に置くことになる条項は、当事者対等の原則に反するとして、その効力を否定する見解もみうけられますが、普通取引約款の特殊性から考えて、一概にその効力を否定しうるかは疑問です。
貸付利率は銀行の取益の根源たるもので、経済情勢の変動による影響はさけられないものであり、かつ銀行はその変動に即応しなければならない立場にあるために、銀行に一方的な変更権が与えられていても、必ずしも不当であるとはいえません。
変更の要件としては、金融情勢の変化その他相当の事由があることが必要であり、相当の事由とは、一般的、客観的な事情の変更がある場合です。したがって、個々の取引先について発生する個別的な事情による貸付利率の変更等については取引先の同意が必要です。取引先から利率等の変更を求めることができるかどうかについては、争いがあり、約定書ひな型三条一項の越旨は、取引先の側からの変更要求の申出にも当然適用されるべきであるとする見解もありますが、銀行は金融状勢の変化等があった場合にも、なお約定期限までは貸付取引を継続しなければならないのに対して、貸付先は期限前でも貸金の返済をなしうる自由を有するという両者の立場の差異に着目して、銀行に認められる利率等の変更権を当然に貸付先に認めなければならない理由はないとする見解もあります。

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