金銭貸借での資金使途

個人はもとより企業にしても、資金を借り入れるについては、何らかの必要な理由があってのことです。建物を建てるとか設備投資や、あるいは運転資金が要るとか決算資金が要るとかいったように、どのような目的でどのような資金として必要なのか、それぞれ事情があるはずです。一方で貸付ける側では、借入側の必要理由から信用状況に変化がないか、貸付金が長期に固定する性格のものか、短期に回収できるものかといったことを判断し、貸付方法や貸付条件を検討することになります。したがって金銭貸借では何らかの意味で資金使途は特定されるのが一般的です。

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一般の金融取引の例で、設備を拡充したり更新したりする場合のいわゆる設備資金については、企業としても事業収益で安定的に返済することが望ましいので、貸付方法としては、返済条件が約定されている長期貸付として証書貸付とします。次に売上が増えてきたことにより受取手形が増えて運転資金が窮屈になったという場合であれば、受取手形の銘柄にもよりますが手形割引か商手担保の手形貸付が一般的であり、決算資金のような季節資金であれば、短気的な単名貸付になるといったことです。
そして設備資金であれば、その資金使途によっては、企業の実態からみて設備計画が大きすぎるとか、予想収益からみて回収に何年かかるかとか、物的担保として適当なものがあるかといった関連した諸種の検討、判断が行なわれたうえで金銭貸借にこぎつけることになります。したがって、こういった諸々の判断、選択の基礎になっている金銭貸借の資金使途が、借入後、借入側で全く別の使途に使われることは貸主側にとっては好ましいことではないといえます。
市中金融機関でも、前述のような貸付までの判断段階で資金使途を重視しているわけで、それが貸付方式の選択等となって表れることでもあり、少なくとも証書貸付では、金銭消費貸借契約証書上で使途を明示しています。政府系金融機関などの制度融資の場合には、特定の政策目的に徒って資金を供給している立場にあるために、特定の資金使途に貸付が限定され、したがって資金使途に対する制約は厳格なものとなります。制度融資の場合は、金銭貸借に至る過程でも貸付の適否決定を左右することになるので、資金使途の検討は十分行なわれますが、金銭貸借に際しては、契約上資金の使途を明記し、加えて約定した資金使途どおりに貸付金を使用しないときは、貸付金の全部または一部について期限の利益を失わせ、直ちに返済させる旨の特約を設けています。
金銭貸借にあたって、資金使途を約定している場合には、借入金を使途どおり使用しなければならないという拘束を受けることは当然です。
短期の手形貸付の場合には、契約書の形では資金の使途をことさら約定することはないので、資金使途の拘束力は法的にはないことになります。しかし、借入の申込段階では前述したとおり資金使途を説明し借り入れるのが一般的であるために、これに反するような資金の使い方をした場合には、信用を失うことになり、その後の継続取引に支障が生じる結果となるので、その意味での実質的制約を負担するということはいえます。
金銭貸借にあたり資金使途を約定している場合で、特に資金使途を厳格に管理している制度融資等にあっては、金銭貸借後、資金を使途どおり使用したかどうかの報告を受け、確認することにしているものが多くなっています。
資金使途をもっとも厳格に管理する方法としては、設備資金の場合であれば、貸付資金を貸主が預金等の形で預かっておいて、機械購入先だとか工事業者からの諸求書、領収書を借主に提示させて、その代金に見合う金額を払い出すという方法でチェックします。
次善の策としては、工事がある程度進行した段階あるいは完成した段階で、事後的に代金の支払状況を領収書あるいは経理帳簿で確認するなり、現地に行って工事等の完成状況を現物で確認するといった方法があります。金銭貸借にあたり資金使途を約定し拘東している場合には、資金を約定どおりの使途に使用しないことは、契約違反になるので、銀行取引約定書の適用を受ける貸付であれば、取引約定に違反したケースとして期限の利益の喪失条項に該当することになります。制度融資の場合であれば、資金使途違反を期限の利益の請求喪失事由として明記するのが一般的です。
資金使途違反により実際に期限の利益を喪失させるか否かは、資金使途違反の内容、程度にもよることであり、信用力に重大な影響を及ぼすような事悪かどうかにもよるために、一概にはいえません。ただ、制度融資等にあっては、資金使途違反によって、結果として資金の使途が当該貸付機関の貸付対象から外れることになる場合が有り得ます。この場合は当然に期限の利益を喪失させる措置がとられることになるので、借主は即時借入金を返済せざるをえません。また制度融資の場合には、資金使途によって貸付利率が別れるものがあります。この場合には、期恨の利益は失わないまでも、特約によって利率の低滅措置の取消が行なわれることがあります。これも資金使途が変ることによって利率を低減する等の優遇措置の対象性を失うからです。

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