金銭貸借と印鑑証明

文章に捺印することは、文書内容についての合意の確認を意味しています。金銭貸借取引そのものは、要式行為ではないために、文書を作成し、当事者が捺印しなくとも有効に成立しますが、通常の金銭貸借取引においては、金員の授受があったことの確認のほか、貸借された金額の確認あるいは返済期限その他の返済条件や借用期間中の権利義務についての付帯条件の確認のため、これ等の事項を盛り込んだ契約証書を作成して、当事者が捺印するのが一般的です。
印鑑証明とは、あらかしめ届け出て登録された印鑑に基づいて、官公署が本人の印鑑であることの証明を行なうものです。印鑑とは、この登録された印鑑のことをいいます。印鑑登録のために使用された印章のことを一般に実印とよんでいます。

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印鑑登録制度は、個人については市町村役所が行なっており、また会社の代表者等については登記所がこれを行なっています。いずれも一個人、一代表者については、一つの印鑑登録しか認められません。
民事訴訟で文書を書証として提出する場合に、私文書については本人またはその代理人の署名または捺印があるときは、真正な文書としての推定を受けます。文書の真否の証明のためには、印影の対照によることが認められています。
したがって、印鑑証明のある捺印文書は、本人の捺印のある文書として形式的証拠力をもつことになります。
もちろん印章盗用等で本人の知らないままに実印が持ち出され、文書に捺印されたことの反証をあげれば実質的証拠力は持ち得ませんが、そういった反証を挙げないかぎり、その文書は本人がその意思に基づいて作成したものと認められることになります。
このようなことから、印鑑証明は、本人の確認のための基本的手段として実務上は使用されています。例えば公証人が公正証書を作成する場合に、嘱託人の氏名を知らず、あるいは嘱託人と面識がないようなときには、官公署の作成した印鑑証明書の提出その他これに準ずべき確実な方法でその人違いでないことの証明をさせることになっています。また不動産の登記実務でも、不動産の所有者が登記義務者となって登記の申請をする場合あるいは登記実務上第三者の承諾書を添付すべき場合等には、登記申請の真正を確認する手段として、印鑑証明書の添付を要求しています。
このように、金銭貸借取引において印鑑証明を徴求することの意味は明らかですが、要約すると、第一には金銭貸借取引においては返済条件、取引上の特約等の合意およびその確認が重要ですが、そのためには当事者の契約証書への捺印を求めることが一般的であること、その際、契約証書への捺印が本人の意思に基づくものであることの確認手段として、また契約内容について後日の紛争が生じないよう証拠書類としての証拠力を確保する手段として、印鑑証明を徴求するものです。
引き続き不動産等に担保を設定する場合には、登記申請手続上も印鑑証明書を必要とするので、そのための手続書類として、また登記手続書類の真正を確認する手段としての意味をも合わせ持つことになります。
登記実務では、印鑑証明書は、作成後三ヶ月以内のものを添付すべきものとされています。改印等による登録印鑑の変更を考慮して、できるだけ直近時点での印鑑証明を徴求して本人の意思確認、文書の真正の確傑をはかろうとする趣旨です。
登記実務にかぎらず、金銭貸借取引の一般的実務でも、同様の趣旨で直近期の印鑑証明書を徴求するよう配慮されています。なお、印鑑証明書の有効期間は、あくまでも契約証書作成時点での本人の確認手段としてのことであり、契約書作成後は作成時点での確認の証拠書類として、廃棄することなく期限に関係なく保存しておかなければなりません。

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