金銭貸借約款の有効性

金銭貸借約款は、当事者の知、不知にかかわらず当事者を拘束します。その根拠をめぐって議論がなされてきました。自治法規説、意思推定説、附従契約説、商慣習説、制度説、客観的意思説などのいずれの説によるかによって約款解釈の原則、判断基準に差異があるといえますが、約款は法規と同様に、客観的、統一的に解釈すべきです。しかし約款は設定者の一方的作成にかかるものであるために、規範性を有するとはいえ、直ちに全てを有効と容認すべきものではありません。特に約款の必要性とその機能からみて合理的なものに限って有効なものと認容すべきです。
通常約款の合理性は、法令、行政上の監督および裁判上争われることによって担保されます。しかし銀行取引約款は、民商法の強行規定による枠づけがあります。これに反する約款の条項は無効となるほか、行政上の事前監督もありません。ただ現行約款を変更するにあたり認可権が行政庁に保留されているにすぎません。結局金銭貸借約款の合理性は、訴訟をまって機能している裁判例によって担保されているにすぎません。

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約款は、設定者側が一方的に規定したものであるために規範性があるとはいえ、類推、拡張解釈はなすべきではありません。約款に規定なき事項、疑わしき条項は作成者に不利に解釈すべきであるという有力な学説もあります。
約定書には、違法、無効であると指摘できる条項は見当りません。しかしその合理性につき問題がないわけではありません。
まず約款は公示されなければなりません。約款に法規性を認めるかぎり、約款の内容を知る機会を与えることは、その前提でなければなりません。また差入型方式は前記のことと相俟って疑われます。金銭貸借は、法理論的には対等な当事者を前提とする契約であり、差入型方式のように貸し与えるという姿勢にはなじみません。またこの姿勢は内容を不合理にする要素を持っているといえます。
約款の内容についても争点は多く、まず銀行、信用金庫などの約款につき、利息が間題となることはありません。ただ約定書は銀行に金利等の変更権を留保している銀行取引は継続的であるために、その間金融情勢、金融相場の変動を伴うので、その対応策は必要です。その措置もそのかぎりにおいて合理性を持ちます。しかし約定書のように、各銀行に恣意的な金利変更権を認める表現は避け、監督官庁の許可、ないし届を条件とすべきです。
約定書四条は、増担保請求権、弁済充当権、債務不履行にあたり、銀行が占有する動産、有価証券などにつき、銀行に任意処分権などを与えています。債権と担保とは契約時を基準に相関的に決定されるものです。各権利を無制約に銀行が留保し、逆に取引先の権利の確保を明確化していないのは、必ずしも合理性があるとはいえません。
約定書は、民法の期限喪失事由にまかせたのでは、債権の保全上不安があるとの発想から期限利益喪失条項を規定しました。そして相殺予約をあわせ規定しています。
貸金債権の迅速確実な回収は、銀行の公益性から支持されますが、それを逸脱し、取引先に不当な圧迫となるときは、約款の合理性は失われていきます。そのような意味から五条の各項号は必ずしも信用が悪化していない場合、要件が不明確なものを含んでおり、取引先の不安が大きくなります。銀行による濫用は少ないとはいえ、取引先の利益維持との関係からみて、取引先の信用悪化の客観的事情を具体的に規定するのが望ましいと思われます。
相殺の担保機能を重要視して、最大判昭和四五年六月二五日は、差押後における自働債権、受働債権の弁済期の先後を問わず、相殺を肯定し、かつ期限喪失約款、相殺予約を第三者に対抗しうると判示しました。本判決によって案項の存在意義は、滅少しましたが、差押時などに貸付債権の弁済期が未到来、預金債権の弁済期が到来しているときには、なお意義のある特約といえます。
約定書は、銀行に差し入れた証書などの危険負担を、取引先に負わせました。危険負担に関する規定は、任意規定であるために、前記条項は違法ではありません。しかし当該条項のやむをえない事情とは、銀行が相当な注意をしても防止しえない事情に限定すべきです。また約定書は広く免責条項を規定しています。しかしかなり間題を含んだ条項です。例えば銀行は手形の裏書を受けた場合は、善管注意義務を負担し、権利保全手続をなすべきです。また印鑑照合も職業上要求される注意義務をつくすべきです。本条項がそれらをも免責するとするならば合理性を失うものと解されます。
約定書は、保証人の有する代位権を制限し、銀行が債権者として負担する担保保存義務を免除しています。いずれもゆきすぎであり、保証人にとって酷であるといえます。

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