金銭貸借約款の特色

今日では自己資本のみで企業活動をなすことは不可能であり、資本の導入に依存しなければなりません。消費金融においてもその越旨は同様で、金融機関が経済社会の中枢を占める理由もここにあります。金銭債権は給付の内容が没個性的な金銭であり、かつ大量的、継続的な取引であるのを常としています。この金融機関の占める地位と金銭債権の性質から金銭貸借の定型化、つまり約款の形成素地は容易に理解できます。金融業の合理的経営の要請は、契約の方式、内容の標準化、画一化を図り、計画的、効率的の良い取引の実現を追求します。金融機関は、約款に債権の保全条項、回収を迅速確実にする条項、免責条項などを規定することによって、金融業を安定させ、預金者に対する支払を確実にしようとします。これは金融機関の公益性からみて、合理的な意義を有するものと評価しなければなりません。

スポンサーリンク

お金を借りる!

金銭債権の没個性的内容からみて、金銭貸借約款は、統一的内容が設定される要素を持っています。また約款の統一は、金融業務の多角化したことから、金融機関側からも、顧客側からも有利であり、かつ便利です。この約款の利点をふまえて、全国銀行協会連合会は昭和三七年八月六日、銀行取引約定書雛型を公表し、同年九月に相互銀行取引約定書、昭和四○年三月に、信用金庫取引約定書の雛形が公表されています。後二者は、前者にならうものであって、いずれも利用の定着度は高く、それなりの効力を発揮しています。
ただ約定書の内容は、銀行取引業務の一切を規定するものではなく、与信取引のうち基本的法律関係、手形取引についてのみ規定したにすぎません。その後全銀連は昭和四四年に、当座勘定約定書、個人当座勘定約定書、普通預金規定の雛型を公表しました。
経済の自成法といえる約款は、契約自由の原則からみて有効であり、むしろ積極的に評価しなければなりません。ただ約款は金融機関側が一方的に設定したものであり、そこでは経済的優位性を活用し、自己に有利な条項を不要なものまで念入りに盛り込むことは容易に想像できます。
統一的金銭貸借約款を、かかる経済的背景を中心してみると、次のような特色があります。
まず約款は、金融業務の全てを網羅するものではなく、断片的です。これは約定書が銀行などの一方的形成にかかるものであり、緊急必要な部分から作成されたことに由来します。
約定書もそうですが、約款は差入型方式が採用されています。つまり銀行の権利と願客の義務のみを規定し、銀行の要求に応じ、顧客が署名、押印し、かつ銀行のみがその約定書を保有するという方式です。この方式が採用された理由は、多年の慣行と、事務処理の効率をよくするため、銀行側は資金を融資した後には、貸金の確保だけが残り、かつ銀行側の義務はほとんど残らないなどの理由に基づくものです。
約款の内容には、取引先の信用状態の確保、債権回収を容易に、かつ迅速確実にするための条項が規定されています。約款は金融者側が一方的に設定するものであるために、その内容は必然的にかようになります。銀行など金融企業の公益性からかかる条項は合理的な基礎を有するものといえます。しかし顧客側に不当な圧迫になっていないか、約款の適法性にかかわる論点を含んでいます。
約款は、その性質上契約当事者だげを拘束するということから、約款の内容が、法規を変更、排除するものを規定しています。しかし把握した担保、千形、小切手のように銀行事務処理の結果が、当事者ばかりでなく、広く第三者に影響をおよぼす場合には、強行規定に矛盾しないよう、約款の内容を調和させなければなりません。

お金を借りる!

貸付金による預金と金銭貸借/ 第三者への金銭の交付と消費貸借/ 手形・小切手の交付と金銭貸借/ 金銭消費貸借の予約/ 諾成的消費貸借/ 連帯債務貸付/ 金銭貸借と書面/ 公正証書作成の意義/ 証書貸付と手形貸付/ 金銭貸借約款の特色/ 金銭貸借約款の有効性/ 金銭貸借と印鑑証明/ 捨印とその利用/ 消費者ローン/ 代理貸付/ コールローン/ 金銭貸借での資金使途/ 金銭貸借の利息/ 利息の利率約定/ 遅延損害金/ 利息の棚上げ/ 貸付金の返済期限/ 期限の利益喪失条項/