金銭貸借と書面

契約書には協定書、約定書、覚書、念書、差入書等標題は様々なものがありますが、その実質にはかわりありません。
基本的なことですが、人間の記憶力には限界があり、当事者間の契約を書面化しておくことによって、何時、誰と、どのような内容の契約を締結したかを何時でも把握できるようにする点に意味があります。特に今日のように企業が巨大化し、契約担当者に変動が生じても、企業が内部的にも外部的にも経済的組織的機能を完全に維持し、債権の管理を健全に行なってゆくためには当該契約内容が客観化される必要があり、そこに契約の書面化が要請されるわけです。なお書面にすることにより当事者が慎重な意思決定をすることになる点も見過せません。
契約を書面化することは、後日相手方不履行の事態が発生したときに、契約内容を証明する最大の証拠となり、これによって相手方に任意の履行をせまる有力な手段となります。また最終的には訴訟の場における証拠方法としての重要な役割を果たす意味を持っています。今日のように契約の書面化が通常のことになっていると、大企業などの場合には、契約書がないと逆に契約の不成立が推認される恐れも生じてくることにも注意すべきです。

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債権法の分野ではその法規の性質はほとんどが任意法規です。したがって公序良俗に反しない範囲では任意法視を排斥して自由にその内容を決定することができます。また成文法の規定自体の不備と相侯って経済取引の実態が多様化複雑化してくれば、その取引に即した形で法を修正或いは補完する必要があり、そのために意思表示を明確にするとともに複雑な権利関係を明確化する意味で書面が利用されることになります。
普通取引約款にみられるように、契約内容に法規範的役割をもたせるために書面が利用されている点も見逃せません。資本主義経済が高度化して企業が巨大化すれば必然的にその取引量は膨大なものになります。この場合に全業がその都度契約内容をその場で商議していたのでは煩にたえず、その経済目的を達することができず、ひいては公共の利益をも害する結果となります。そこで企業としては顧客との取引にあたって予め定型的に、しかもかなり詳細な条項を書面化し、多数の顧客を相手方としながらそれぞれの契約の成立を簡易迅速かつ確実ならしめることになります。民法は社会で通常行なわれる契約を内容の共通点に従って一三種類の典型契約に分類して規定しており、商法もその他のいくつかの典型契約を規定しています。それは実際に行なわれた契約内容が不明瞭不完全な場合にこれを明瞭化完全化する解釈規準を与える作用をなすものですが、これら成文法の規定は不充分のそしりを免れません。事実金銭貸付の間題に限定しても、実際の貸付取引形態は、手形貸付、証書貸付、当座貸越、手形割引、支払承諸等多岐にわたり、これら全ての取引形態を典型契約の枠内で解決することはできません。このように実際上の取引が成文法の規定をはるかに先行してしまうという事態になれば、前述のように取引の大量化に伴って取引がある程度定型化されていることと相俟って、定型化された各種の取引に妥当するような個別的具体的法規範の定立が要請され、ここに普通取引約款の存在理由があるわけです。法規範性については、事実たる慣習も法規範性を持ちますが、書面の永年の使用によって事実たる慣習を形成して行きます。

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